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 毎度思うけれど、大学のテストは意味がわからない。テキストを見て回答していいなんて、このテストと普段の授業はなんのためにあるんだろう。  要は、出席すれば習熟度に関わらず単位をやるよ、というわけだ。学歴社会が聞いて呆れる。将来、毎日休まず仕事に行くための訓練かしら。それなら高校までで十分訓練済みだ。  なんて生意気に口を尖らせてみたものの、正直なところ、テストはラクに越したことはない。でも、いっそこんな意味のないテスト自体なければ早起きしなくて済むのに、とも思う。  そんな怠惰な欠伸をしながら受けた一限のテストを終えて校舎の外に出れば、むき出しのうなじを太陽がジリジリ攻撃した。失敗だ、お団子なんかにするんじゃなかった。  朝よりも一段と強くなった日差しの中、足早に第一食堂へと向かう。ランチにはまだ早いけれど、残念ながら二限は空き時間だ。  同じテストを受けていた友人達はみな、二限に向かった。わたしだけ講義の組み方に計画性がない。でもそれは去年反省したはずだから、ついでに学習能力もない。こんな頭でよく大学生になれたもんだ。  時刻はまだ十時半くらい。食堂はもちろんガラガラだった。厨房で食器が重なり合う音が、静けさの中に大きく響く。  道すがらの自動販売機で買ったドクターペッパーを手に、長テーブル達に挟まれた通路を歩いていると、 「亜由美ー」  奥からわたしを呼ぶ高い声。視線をやれば、メッシュが大量に入った長い髪のギャルが、こちらに手を振っていた。 「あ、絵里(えり)。おはよー」  サークル仲間の絵里だ。ところで、声と派手なファッションで認識できたものの、遠くからじゃ薄ピンクの唇しか見えない。日焼けサロンに通い過ぎだと思う。 「ねえ、絵里も無計画人間?」  向かいに座りつつ尋ねると、絵里は「唐突になに?」と笑った。
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