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栞は最低な義妹だった。
それは昔から変わらない。
「ねぇ あんたの鶏肉ちょうだいよ」
「ちょっと やめてよ・・・」
「灯里。お姉ちゃんなんだからあげなさいよ。」
母が私を睨んだ。
「・・・」
私の返事を待たずに、栞のスプーンがクリームシチューに突っ込まれる。
肉は嫌いじゃない。それも皿の中で一番大きな鶏肉だった。文句を言わない私を横目に、栞は幸せな顔で鶏肉を頬張っている。
人参とじゃがいもが残ったクリームシチュー・・・あんなに美味しそうだったのに、食う気が一気に失せた。
好きで姉になったわけじゃない。
栞は母の連れ子で、私と血がつながっていない。
実母が交通事故で亡くなり魂が抜けたようだった父にとって、顔つきが似ているこの女は女神同然だっただろう。すっかり安心しきって、単身赴任をしてしまった。
私にとって この女も 栞も 悪魔だった。
栞は私のものを何かと横取りして返さない。私が抗議をすると、女がやってきて突き飛ばされる。
女のことはもちろん大嫌いだったし、同じ目つきをしている栞は 歳が近いせいかもっと嫌いだった。
もっともクリームシチュー事件の翌日 栞はなぜか体調を崩して学校を休んでいたので、私は内心ざまぁと思った。
「人のものまで食べるからそうなんのよ」
見えない敵に毒吐きながら石ころを蹴飛ばし登校したことを 覚えている。
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