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成長して 少しは変わるかと思った。
私と栞はそれぞれ違う高校に進学した。
「灯里 おめでとう。一緒にいられなくてごめんな・・・。」
「ううん。平気。もう高校生だし」
父は時々帰ってくるが、またすぐに遠くへ行ってしまう。そのひとときが私にとって唯一救われる時間であり、再び居心地の悪い空間へ戻る前兆でもあった。父にだけは心配してほしくなくて、必死で笑顔を取り繕った。
「太輔って人、案外いい人ね~♪」
「・・・え?」
栞の口から出てきた名前に、ギョッとする。
「・・・なんで・・・知ってるの・・・」
「えー?だって最近付き合い始めたし!」
爪を磨きながら栞は笑う。
『好きなやつができた。別れてほしい。』
既に消してしまったメッセージが蘇ってくる。
「・・・うそ・・・」
「ほんとだって!ほら!」
栞に突きつけられたスマートフォンの中で、太輔と栞が笑っている。私といた頃の彼より、もっと笑えている気がする。
栞が着ていたワンピースも帽子も 「今日友達と遊んでくるから!」と強引に引っ張り出していった 私のものだった。
「・・・あんた・・・知ってたの・・・?」
「知ってるも何も 太輔から言い寄ってきたんだもん。それとも何?私が略奪したとか言うの?」
「・・・ふざけないでよ・・・」
「は?」
「・・・あんた・・・どれだけ人のもの取れば気が済むのよ・・・!!!」
私は怒りを最小限に抑えようとしたが、半ば叫ぶように部屋を出た。
・・・もう耐えられない。
何も変わらないアイツのことも ずっと取られ続けてばかりの私も・・・もう・・・無理だった。
その日から 栞とは家庭内絶縁状態だった。
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