最低な義妹

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その後 私は少し離れた場所に部屋を借り、出版や文学関係の仕事を取り扱う会社に就職した。同級生が大学生活を満喫している様子が映し出された写真が目に入ると なんとなく苦しかったが、あの女に金を出してもらうくらいなら自分で稼いだほうがマシだった。 ただここまで来るのは簡単ではなかった。ついこの間まで子どもだった自分が、社会というコミュニティーに放り出されたのだ。逃げ場のない状況の中で、自分の生活は自分で守らなければいけなかったし、「稼ぐ」という行為の大変さを実感しなくてはならなかった。 「灯里ちゃんのコラム記事 先方の方から好評だったみたい。文学部か何かだったの?」 「あ、いいえ・・・大学は出てないんです・・・。文章書くのが好きで バイトしながらサイトに投稿してたんです。」 褒められることに慣れていない私は、曖昧に笑うことが精一杯だ。 あの女の支配下にいた頃、私は常に栞と比較されていた。 『恥ずかしいから栞と一緒に外歩かないで』 『あんたは陰気臭くて腹が立つ』 『栞のほうが才能あるんだから・・・』 栞・・・栞・・・どんな時だって女にとっては栞が一番。褒められたことなんて一度たりとも無かった。 アイツにとっても栞にとっても 私は都合のいい道具でしかない。 文房具や洋服ならまだ可愛い方だったが、恋人や将来まで栞に取られ、父を罵られたことで一気に爆発してしまった。頬を打った感覚が 今でも時々右手に蘇る。 音信不通になってずいぶん経つ。 それほどあの家には私の存在意義がなかったのだろうか。 ここまで来た以上、逆に吹っ切れるが、どうも気にかかることがある。 栞の写真が  あれから1枚も更新されていないのだ。
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