最低な義妹

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「シエルちゃーん。お客さんよー。」 着物を着た小綺麗な女性がホールに声をかける。 「〇〇さん?」 「ううん。多分初めての子かな・・・若い女の子よ。」 「えー 誰だろ。取りあえず出てみます。  いらっしゃいま・・・」 「・・・・・・栞」 「・・・・・・なんでいるの・・・」 「・・・今・・・大丈夫・・・?」 「・・・・・ママ  30分ぐらい抜けていい?」 栞は肩が大きく開いたアクアマリン色のワンビースを着ていた。髪が金色になっているが、目元を見ればすぐに分かる。 「・・・客来るから 早めにして」 「・・・お父さんから聞いたよ・・・。」 「それで?」 「・・・・・・ごめん・・・」 「何であんたが謝んのよ」 栞は目を合わせようとせず、ツンと跳ね返すような物言いだった。 「・・・守ってくれてたんでしょ?私のこと・・・」 「別に。自殺でもされたら迷惑だから。」 ネオンが光り始める店裏で、父との時とは違ったギクシャク感が流れる。 「・・・えwww まさかそのためだけに来たのっ?」 「うん」 「何してんだよ。」 栞は小さい箱からタバコを一本取り出す。 「ライター持ってる?」 「ううん」 「だろうね」 自分専用のライターを片手に、火を付けていた。 お互い通い合わなかった期間の長さが感じられる。 「アイツはほんとにどうしようもない。夜な夜な男を取っ替え引っ替えして、何人目かに妊娠したんだわ。で、結婚だ賠償だの騒ぎになって結局逃げられて、知らない間に母親になったって感じ。」 フゥっと息を吐くと、苦い煙が浮かんで消えた。 「・・・お父さん選んだのは・・・?」 「さあね。単に金が底ついたのと、弱くなった気持ちへのつけこみでしょ。私が知るよしもないけどね。」 なるほど。初めから愛なんて無かったのだ。 「だいたい予想はついてたよ。アイツにとってウチもアンタも身代金目当ての人質。自由な金が無くなればいつ消されて保険金取られるか分からなかったんだから。そこんとこ知らなかったでしょ?」 「うん・・・」 「どんくせーな・・・。だから赤身肉入れられたり 男の品定め失敗したりすんのよ。太輔ってやつ覚えてるでしょ?」 「高校の時の・・・?」 「あれに捕まってたらアンタすぐボロボロにされてたよ。女のこと性欲満たす機械としか見てなかったから。何人もダチが泣かされてた。」 「・・・えっ  栞・・・」 「あー 大丈夫。寸前でテープレコーダー見せつけて『今度ウチらにに近づいたら これごと警察に突き出す』って脅しといたら血相変えて逃げてった。臆病すぎてワロタ(笑)」 栞は意地悪い人相で笑う。 なぜだろう 今まであんなにも胸糞悪いと思っていた顔なのに 今はなんだか違う気がする。
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