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ダンジョン名駅
畑と次郎が怪しい日本人男性を追いかけていると、市営地下鉄に乗り、名駅(名古屋駅の略。なぜか、名古屋○○は略されると、めい○○と呼ばれる。よって、名古屋の水は名水……あっ話が逸れたっ)の地下にやって来た。
人の往来が激しく、見失わないように畑は男性を凝視して進む。
「おや?」
「次郎さんどうしました?」
気の抜けた声を出す先輩を見ずに、畑は尋ねる。
「男性が前を行く二人と違う方を歩いていくようですね……」
「え。あいつしか見てなかったから気づきませんでした。
……あれ? あいつ、止まりましたね。俺、聞きこみ行ってきますっ!」
「あ、畑くん……」
またしても、突っ走る後輩に、次郎はやれやれと苦笑いする。
「しかたありませんね……」
そう言う次郎が進む方向は、畑とは別のほうだ。
次郎の目でずっと追っていた外国人二人組のほうへと歩を進めだした。
「え! あなたも警官だったんですか!」
一方、次郎が一緒に来てないことも気づかず聞きこみをした畑は、悲しい現実を知ることになった。
今日もカンがあたらなかったという、悲しい現実を……。
「容疑者に近しき人物を追いかけていたら、ここの別れ道で見失ってしまって……、もう一本の道に行こうとしてたとこなんですけど……今からそっちに行ってもわからないかもしれませんね……」
本当に名駅はダンジョンだ……と、青城は落ちこむ。
が、それ以上に畑は、落ちこんだ。
((ああ! 俺のカンのせいで、違うほう追いかけてきちゃった!! しかも、俺が声かけたせいで、こいつの追跡を邪魔しちまったぁぁぁ))
そもそも、カンに頼るのが間違っているのだが、畑はそれを学習しない。
ピンコン!
畑のスマホから通知音が響いた。
マナーモードにしとくの忘れてた! と、焦って、スマホを見る。
「じ、次郎さん!?」
畑は周りを見渡す。
メッセージ通知を見て、畑はようやく次郎さんが隣にいないことに気がついた。
「あ、相棒が、彼らの後をついて行ったみたいで……あおなみ線に乗ったそうです」
「あおなみ線? ここから、どうやったら行けますか」
「一緒に行きましょう……たしか、こっちが近道です」
畑が歩きだし、青城はついていく。
「えと、青城さんも刑事ですか。巡査でめずらしい……」
先程警察手帳を見せてもらったときに、名前を知った畑が尋ねる。
「いえ。地域課の交番勤務です。
ある店で彼らと会ってて、気になってついてきてしまいました。なんか、悩みを抱えてたようで……。
犯人を捕まえるというより、悩みを解決してあげたいと思ってつけてたんです」
「へぇ……あれ、こっちでよかったかな」
「ん?」
「あ、いや。青城さんは優しい方ですね」
「外国人だからって、疑うのが嫌なんです」
「ふーん」
((外国人関係なく疑うのが警官の仕事だと思うんだけどな……てか、こっちだっけ?))
……………………。
「……。もう30分経ちましたが、いつ地下を出るのですか?」
「すまん。迷った」
「えっ」
「でも、大丈夫。たしか、ここから行けたはず」
「いや、でも、桜通線って、地下鉄ですよね?」
「大丈夫だって」
地下鉄桜通線のほうへと来て、青城の不安が高まる。
だが、しばらく進むと、階段を上り始め――、出てきた場所はなんと――、
「JR? こんなところに出るんですね」
JRの在来線と新幹線の改札口やみどりの窓口がある幅広い通り、名駅のコンコース。
JRのこの中央改札は青城も知っている。
見たことある場所に、こんな所から来れるとは知らず、ダンジョン名駅の怖さをいっそう感じる。
「ああ。ここまで来れば、大丈夫。あおなみ線もたしかJRだから」
「へぇ。JRなんですね。
……あれ? この中央改札口入らないんですか?」
畑はJR在来線の中央改札に向かわず、新幹線改札へと歩いていく。
「あおなみ線だけはこっちなんだよねぇ」
ポリポリと頭を掻く畑を見、青城に不安がつのる。
新幹線改札口も通りすぎ、左に折れて、細い通路を進み出す。
「あ、あおなみ線だ!」
やっとたどり着いたあおなみ線の改札口に、青城の頭の中で、ファンファーレが響いたのだった。
ちなみに、あおなみ線はJRではなく、名古屋臨海高速鉄道が運行中である。
wikipediaの名古屋臨海高速鉄道あおなみ線より抜粋
“旅客列車は、JR東海から当路線を譲渡され、第一種鉄道事業者として保有している名古屋臨海高速鉄道が運行している。また、同路線のJR東海からの譲渡後もJR貨物が第二種鉄道事業者として、名古屋 - 名古屋貨物ターミナル間において貨物列車の運行を行っている”
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