信じたい。助けたい。

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信じたい。助けたい。

 畑と次郎は無事あおなみ線に乗った。名古屋駅が始発駅のため、何番線に乗るとかで困る心配はなかった。 「次郎さんは、荒子川公園駅で降りたみたいです」  次郎から届いたスマホのメッセージを見て、畑は青城に教える。 「えっ。荒子川公園駅って、荒子川公園のそばですか?」  初めてのあおなみ線の車窓に見いっていた(特に青波も見えない建物ばかりの風景だが)青城は、荒子川公園と聞き、過剰に反応した。 「ん? そばというか、公園の中だったかなぁ」 「やっぱり……」  青城はある考えにいたり目を輝かせる。 「どうした?」 「やっぱり、彼らは花が好きなんですよ」 「花?」 「そうです。彼らはきっと、ラベンダー畑を見にきたんですよ」 「なに言ってるんだ?」 「花が好きな彼らは、花好きな店主と意気投合し、ラベンダー畑を教えてもらったんですよ。きっと」  頭お花畑な推理を繰り広げられ、畑はついていけずに返答に困って車窓の外を見つめる。  荒子川公園駅はもう次のようだ。  …………………………。 「どうやら、花見ではないようです」  目的駅に着く前に、次郎さんから送信されてきた場所が示された地図を見て、畑は青城にとって残念な答えを告げた。 「え……。じゃぁ、彼らはなんで荒子川公園駅に?」  自身にも地図を見させてもらった青城がたじろぐ。 「それを今から調べるんだろ。行きますよ」  荒子川公園駅に到着し、電車を降りた二人は、地図に示された場所へと進む。 「やはり、あなたは怪しい人物ではありませんでしたか」  とある喫茶店で待っていた次郎は、仲良さげにやってきた二人を観察して、言葉を述べた。  紅茶をゆっくりとすすりながら。 「やはり、俺のカンは当たりませんね……。こいつも、警官でした。あははは」 「畑くん」 「す、すみませんでした」  恥ずかしそうに頭を掻いた畑は、たしなめるような目の次郎に、小さくなる。 「初めまして。地域課の青城です。  僕は、彼らを助けたいのですが……彼らはどこに?」 「助けたい、ですか。面白いことを言いますね……。私は刑事課の田川次郎です。次郎さんと気軽に呼んでください。  彼らは、あそこの倉庫にいますよ。ここから良く見えます」 「そばで張り込まないんですか?」 「そばまで行って少し声を聞けたんですがね、英語がわからないのですよ……」 「僕、英語がわかるので、行ってきましょうか?」 「ありがとうございます。私は、ハンバーガーを食べに行きたいのでおいとまします。  畑くんも行きますよ?」 「え、来たばかr――」  次郎の厳しい顔に、畑は口をつぐみ、ついていった。  青城は独り倉庫へと向かう。  張り込むためではなく、助けるために。  そんな青城は大胆にも、中へと入っていった!  ガラッ――‼  重たい横引き鉄扉を勢いよく青城は開けた。  突然開け放たれた扉に、中にいた三人――クオン、ケン、アリは、光が差しこむ入り口を見つめる。 「やはり、ここにいましたか」  光の中の人物が、三人に顔を向けてそう英語でしゃべった。 「なんだ、おまえか。 通報するのか?」  アリは、光に慣れてきた目でその人物を確認すると、通報するならタダで帰さないといったていで、両手をポキポキと鳴らしながら近づく。  クオンが「アリ! 僕のために殺したりしないで!」と、アリのティシャツの裾を引っ張るが、アリは無視して進む。 「いいえ。あなたたちは悪くないと信じています」 「はぁ? やっぱり、あんたは頭お花畑野郎だな」  近づけば、男は動じず、その上信じているなどとのたまってきやがった。  アリはこいつをどうしようか、少し考えこむ。信じると言われても、隠れ家を知られてしまったのだ。 「僕は、あなたたちを助けたいのです。助けさせてください! 僕は警官です!」  男の正体に、アリの思考は停止し、クオンとケンも息を飲みこんだ。
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