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とにかく会いたいと思った。近付きたいと思った。恋をしてしまったことはわかっていたけど、それを成就させるにはもっと長い時間が必要だと思っていた。実力をつけて自信が持てる男になって、一歩でも二歩でも、彼に近付いてからだと。
だから、何の覚悟もしていなくて。
「…いいんですか?」
「何が」
「彼氏に悪いじゃないですか」
彼は俺の顔を見て、軽く口付けた。
「野暮だなぁ。今それ言う?」
「でも」
「どうせわかんないよ」
小さな声で、ぶっきらぼうにそう呟く。
俺が彼の恋人なら、彼のこんな行動を見抜けるだろうか。
それを考えるには、俺はまだ彼のことを知らな過ぎる。
「もうやっちゃったんだし。すっごい気持ち良かったよ?」
彼はにんまりと笑い、俺の足の間に手を伸ばす。つかまれた俺は、どうすることも出来なくて彼から目をそらす。
「もう一回、イケるよね」
「それは…」
わからない。けれど、つかまれたそこは、じわじわと熱を持ち始める。
「ほら」
悪戯っぽくにっこりと笑う、彼の表情には何の影もない。
「イケそうだね。しよ」
彼は空いている手を俺の後頭部にまわし、もう一度キスをする。
「まだゴムあるし!」
「いやでもだからって」
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