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紅衣服的魍魎 日文版
川岸にたたずむ女が、私に向かって手を振っている。
袖の無い、赤いワンピースを着て。
カラスの濡れ羽のごとく艶やかな髪をし、丸く大きな目をしていて、そっとウインクさせている。
片手には日傘をさし、口元を微かにほほえませて。
私は女に「どこかでお会いしましたか?」と問うた。
女が答える。
口を開き、獣のごとき鋭い歯を見せながら。
「どこかで遭うたこともあり、どこにも居らぬものである」
声はひどくかすれており、低かった。
目の前が暗転し、私は化け物の口中にて断末魔の痛みを味わった。
ああ、そうか。
だから、あの地下鉄は赤いのだ。
私はようやく、合点がいった。
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