3.進展がありそうでして

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「ん。」 「きゃっ」 グイっと腕を引かれた。 突然のことにバランスを崩して、ぼふっと谷崎くんのお腹にぶつかる。 その直後、後ろから車が走り抜けていってそっちに驚いた。 車来てたの気付かなかった…。 「だいじょぶ?」 「う、うん…」 そっと谷崎くんから体を離して、見上げるとそこにはいつもの無表情な顔。 …これは心配してくれている……のかな…? 「ありがと…ございます」 「ん。いこ。」 「うん…って、ちょ…!!」 今度歩き出した時は片手を谷崎くんに握られていて、 指が絡まりあう繋ぎ方のまま強制的に連れていかれる。 い、いや、これは世間一般でいう恋人繋ぎなんですけど…?!! 「ちょっと…!手!!」 「先輩危ないから。あとさっきこっち見てたけど何かあった?」 え、バレてたの?!!!本当に人間?!! 「えーっと…今日、部活は…?」 「今日は休み」 「あ…はい…」 いや会話の広がり…!! ずっと変わらぬ無表情で、でも歩調は合わせてくれていることに気が付いて、 さりげない気遣いに胸がキュウと鳴った気がした。 くそぅ。顔がいいだけじゃないってことですかそうですか。 「…あのさ」 「何?」 「…何でわざわざ送ってくれるの?谷崎くんの家、こっちじゃないし学校も電車使ってるし、帰るの遅くならない?」 そう聞くと、今度はピタッと静止する谷崎くん。 突然のストップにびっくりして私の足も止まる。 「…わからない?」 「へ?」 体をこちらに向けた谷崎くんと目線がぶつかった。 今度は、何か不満そうな、そんな表情。 「何が?」 「俺が来る理由。わからない?」 谷崎くんが来る理由…? 「わかりませんけど…」 というかわかってたら聞かないし…。 そう思ってまた目を合わせると、少し戸惑ったような表情になった。…気がする。 少しの間、目と目が交わって、そしたら今度は少しかがんで顔を近づけてくる谷崎くん。 や、何、待って待ってその顔のイケメン度の破壊力は厳しい…っ!!!! じわっと顔に熱が集まったのを感じて視線をそらした。
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