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「っ?!!?!んっ」
口に押し付けられた熱がほんの少し離れたと思ったら、今度は食むように動いて、慣れないその感触に体が震える。
い、いいい今、キス…されてる?!!!
初めてだというのにどこか心地いい、得体の知れない感情が襲ってきて、離してほしくて谷崎くんの胸を叩いた。
そうしてゆっくり離れていった熱。はっきり映った谷崎くんの表情はいつもの無表情のように見えて、でもその瞳はどこか熱っぽい。
そんな彼が知らない人みたいに見えてしまって困惑した。
「な、なんで」
「…唯先輩が悪い」
「はい?!!」
違うわこれは谷崎くんだわ…!!!
まさかの人のせいという理不尽さに開いた口が塞がらない。
「信じられないんですが…」
「俺も」
「ん?!!」
会話の嚙み合わなさすごいんだけど?!
はぁ、とため息をついたと思ったら離れる谷崎くん。
解放されたと思うと同時につい今さっきまで感じた感触を思い出してしまい、一足遅れた羞恥が襲ってきて顔が熱くなる。
待って、ちょっと待って冷静に考えたら私のファースト、キスが…!!!
駆け足になり始める心音を手で押さえてみようとするけれど、どんどん早くなっていって止められない。
谷崎くんに食べられた口がじんじんしているせいだ、きっと。
もう何もかも谷崎くんのせいだ!!!!
「…ばか」
変態。とも付け加えて言った。
目が合うと、一瞬苦虫を嚙み潰したような表情になって口元を手で隠して目を逸らされる。
何、もう何…!!人のファーストキス奪っておいて!!いや、ファーストキスじゃなかったとしても普通は付き合ったりしてない女の子にキスしないよね?!!!!
恥ずかしさが一周回って段々と怒りに変わってくる。
当の本人はずっと固まって動かないし!!!
「…帰る。さようなら」
もう知らん!!!迎えに来ないでって伝えたし!!私は二次元に生きるので忙しい!!
くるりと、家の方に体を向けてそっちに歩き出そうとした時。
ガシッと腕を掴まれて引き止められた。
何?!と谷崎くんを見ると、すごく困惑したような表情でこちらを見ていて、何故か私が悪いことをしてしまったような気持ちにさせられる。
いや、私は悪くない。悪くはない、はず。…いや悪くないよね?!
段々不安と罪悪感が募り始めてしまって、こうなると厄介で。
「もう……!!」
「…?」
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