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振り向いて、谷崎くんと対峙する。
「ごめんなさいは?」
「???」
いや、そんなきょとんとしないでよちょっと…!
こっちが変な人みたいになるじゃん!
「キスして、ごめんなさい!はい、言って!!!」
クワッと勢いよく催促した。
私の急な行動に驚いたのか、目を見開いた谷崎くん。
そのすぐ後に、彼の薄く綺麗な形の口が動いて、
「…ごめんなさい」
ぽつりと、少し伏せた目でこちらの様子を伺いながらも呟いた。
う…ちょっと可愛いかも……。っていやいや!!多分年下だから可愛く見えるだけ!!!きっとそう…!!
「うん。許さないけど、ゆるす。」
そう言うと、今度は不思議そうにこちらを見てくる。
会った当初は無表情なことが多かったけれど、最近は何だかんだ色んな表情を見ることが多くなった気がするなぁ、なんて思う。
まあ…どんな顔してても元がイケメンだからな…くそっ!
「もうしないって約束して」
はい、指切りするよ。と続けて、小指を出す。
ゆびきりげんまんしたらもう忘れよう…水に流すわけじゃないけど、ファーストキスだったわけだし、何よりデリカシーというものが……。
頭の中の整理をつけるためにあれこれ考えていたら、出した小指に谷崎くんの小指が絡められて、提案したのはこっちなのに思わず驚く。
「唯先輩」
「?何」
「好きかも」
………は?
「ゆびきりげんまんが…?」
「違うけど」
「は????」
いや、何、待って何言ってるのこの人?
「もうしないのは、ムリだけど」
「はい???」
「手に入るまでは我慢する」
ん???え、何??どういうことなの????
会話の嚙み合わなさと、もうしないのはムリという宣言とに困惑している内に「ゆびきった」と言った谷崎くんによって約束が成立した。
え、完全に置いてきぼりだし何も解決してない気がするの私だけ…?
「そういえば」
「今度は何…?!」
「今度の大会、見に来るよね」
「ん?!!」
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