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4.進展したようです
「…時間流れるのって早いね」
「そう?原稿に追われてるからじゃないの?」
それは…あるわむしろその通りだ…!
あれから数週間後。
何故か来る前提で話された大会ことインターハイ予選の試合を見に、美由紀と二人、試合会場である谷崎くんの高校に来ていた。
あの日あの後、行くとは断言できなかったので言葉を濁していたら、「これ日程表」とその場で大会の日程表を渡され、会場はうちだからと話を聞き、それでも行けるかは分からないからと伝えようとしたものの人の話を聞かずに谷崎くんは去っていった。
後日、美由紀に会った際にその話をしたら、だ。
「今年は行くわよ。凜、高校最後だし。あんたも行くでしょ?資料集め」
と言われ、そうだ資料…!!!!とそっちの方に火がついてしまったため今に至る。
だって…!!旬ジャンルなの!!!描きたいの!!!それには必要なこと!!!!
目に映る景色、脳内では推しの春樹くんがあそこにいて、試合前アップしてて…!!と我ながら妄想に余念がない。
「トリップしないで」
「うぎゃっ!!」
隣からの一撃にハッと我に返った。
その一撃を放ってきた美由紀はというとカメラの準備やら何やら忙しそうにしている。
…その隙にこっちの妄想行動を読んで現実に戻してくるスペック恐ろしいな。
思わず尊敬の念で見つめてしまう。
「あ!いたいた!」
「ん?っわ!!!?」
聞きなれた声がしたと思って振り返ろうとした瞬間、ドフッと背中に何かかぶつかる。
何だ?!と思ったら首にキュッと回った腕。
「唯ちゃん来てくれたんだー!」
「凜ちゃんか…!びっくりした!」
後ろからひょこっと顔を見せる凜ちゃん。
って眩しいその笑顔!!!!近すぎる目が焼かれる!!!!
凜ちゃんに後ろからギュッとされて、そのせいもあってかなり至近距離でのキラースマイル。
「凜、これ母さんから差し入れ」
「あ、サンキュー!あとでみんなのとこ持っていく!」
そうして。とだけ言ってまた忙しそうに手を動かす美由紀。
…あれ?この状況にはノータッチなの??
まさかの総スルーに驚きつつも、まあ、この姉弟ならあるか…と納得してしまうのがすごい。
「あ、凜ちゃん。私からもこれ」
「え!マジか、ありがとう!!」
渡したのはお手製のレモンのはちみつ漬け。
小さい頃、凜ちゃんの応援に行ったときにお母さんが持たせてくれて、届けたところだいぶ好評で。
それから大会の時はたまに持ってきては差し入れしていた。
しかももう高校最後の、だもんなぁ…。頑張ってほしい!
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