2.お早い再開でして

2/7
前へ
/34ページ
次へ
「…え」 「あ。やっぱりいた」 そこにいるのは件のイケメン様で。 一瞬にして体が凍り付いた。 「えーーーーっと……」 やばい。非常にヤバい。 怪しいものではないと抜かした上で逃走した手前、この後どこかに突き出されてもおかしくはない。 どうしよう…美由紀帰ってこないし逃げるわけにもいかないし…!! 一人、思考を巡らせているとさらに近寄ってくる男の子。 そして突き出されたものは… 「あ!」 私のデジカメ!!!やっぱりあの時落としてたのか!! 「これ、アンタのでしょ」 「そ、そうです」 「じゃあはい。帰る前に見つかって良かった。」 ずいっと、さらにカメラをこちらに差し出す彼。 返してくれるのであれば…とそれに手を伸ばして掴む…前に今度は引っ込められて伸ばした手が空を切る。 え??何?? 彼を見るとまた気だるそうな顔をしてこちらを見ていた。 「なんで体育館の写真ばっか撮ってんの?」 「え。」 もしかして…いやもしかしなくてもこれは…中身、見られてる!!! 「な、何でもいいじゃないですか」 「たまに、勝手に入って写真撮ろうとする奴いるから。そいつら大体部員のこと撮ってんの。でもアンタのは人が一切入ってないし入ってても風景のおまけみたいな」 ぐっ…!!!がっつり見られている!!! もはや言い逃れ出来ないほどに追い詰められている。 というか多分、正直に言うまで返す気ないって顔をしている!! 「趣味で絵、描くから。その参考用!今日帰ったら必要だから、返して…ください…!」 怖い。まさに陽キャ的イケメンフェイスが怖すぎる…! ふーん。と興味なさげにつぶやいて、今度は身体的な距離を詰めてくる。 「な、なに…?」 「アンタ、どこの学校?高校?」 「え…違います」 じゃあ何処。と詰められて、思わず身構える。 「F大生です。〇〇駅の近くの」 「へぇー。名前は?」 「??坂口唯…」 何だ?何でそんなこと聞くんだ…? 答えるとまたふーん。とつぶやいて、じっと見てくる。 え、本当に何…?イケメンフェイスですごまれるの怖いんですけど…? 視線を逸らせずにいると、後ろから「唯ー!」と名前を呼ばれた。 美由紀の声だ、電話終わったのかな…? そちらを向こうとして、ガシッと手を掴まれて固まる。 さっきから何なんだこの人は…?! 「友達呼んでるし帰るので、カメラ返してください。」 あまり目を合わせずに、早口で催促した。 いやもうほんと早く帰りたい。何なら原稿進めたい。というか原稿進めないと死ぬ。 ぐぬ…と耐えていると、掴まれていた手にデジカメが乗せられ、解放された。 良かった、帰れる!! 「じゃあ、あの、カメラ拾ってくれてありがとうございました。さよなら」 彼が何か言おうと口を開きかけた気がしたけれど、無視して駆け出した。 「誰あれ?」 「カメラ、拾ってくれたの。ほら帰ろ?締め切りヤバいし!」 「あ、カメラ。良かったね」 美由紀の元に駆け寄って、二人帰路についた。 ほんと何か…色んな意味で災難な一日だった…。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加