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こんなのを?と
口にこそ出していないけれど、遠回しに言われている気がして嫌になる。
こういう目がほんとに苦手で堪らない。
向こうに他意があってもなくても、苦手だ。
向けられる視線に体が固まって、動けずにいると何を思ったのか私の腕を引いて、ギュッと抱き込む。
………抱き、込む?????
「唯。」
「っ!!」
突然名前を呼ばれて、息をのむ。
心地いい低音が耳から脳に響く感覚。
「一緒に帰りたい。いいよね」
いいよねって、拒否権無いんじゃん…。
返事をする間もなく谷崎君に手を引かれ、裏門を出たのだった。
*
「ね…もう、離して」
しばらく歩いたところで足を止めた。
この人が何を考えているのか本気でわからない。
何をしに今日大学に来たのか、なんで私に用があるのか、全く分からない。
私に合わせて止まる谷崎くん。でも引かれる手は一向に離れない。
何なんだこの人……今日は帰って作業しないといけないのに…。
「貴方が何をしに来たのかとか、全然わからないし、私今日早く帰らないといけないから。もう離してください。」
精一杯の文句というか、何というか。
とにかく言いたいことをまず伝える。
何か悩むような素振りを見せて、私の顔を覗き込んでくる。
「何か、会いたかったから」
「……はい?」
あ、会いたかったから…?私に…??
「アンタ、変な感じするから。何か気になって。」
「変な感じ…?!!」
そう。と頷かれてしまい、思わず呆気にとられる。
本気で何を考えてるのかよくわからないこの人…!!!
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