今日までそして明日から

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来週あたりからオンラインでの授業がぽつぽつと始まるらしい。パソコンもない僕は当然出られないなと思っていると彼女が一緒に出ればいいじゃんと誘ってくる。 しかしそれは普段オシャレな女の子がある日突然男物の大きいパーカーで講義に現れることよりもさらに受講生をざわつかせることだろう。まぁネット上だから実際のざわつきは聴こえないけど。 彼女は僕が部屋に居ついていることを誰かに話したのだろうか。仲のいい友人もいるだろうし伝えていても不思議ではない。僕はというとまぁいつまでもここにいるわけじゃないしとなんとなく誰にも言えないままでいる。 長期休みに積極的に会うような大学の友達は一人しかいないしその一人は去年の秋ごろから徐々に見かけなくなり連絡も途絶えた。 彼が学校に来なくなった理由は知らない。大学生になると知ってる人間がいつの間にかいなくなるなんてそれほど珍しくないのだと実感させられる。本当は人が一人いなくなるなんて大事件なのだけれど、でもあいつ最近見ねぇなぁで終わってしまう。 100人いなくなれば100通りの理由がありドラマがあるはずなのだけれど、それはまたよくある話でもあるというわけだ。彼は僕にとっては最近見ねぇなぁで済ませられるような間柄ではないのだけれど、だからといっていま出来ることはもうなにもない。 僕にはたまたまタイミングよく彼女からの電話が来て、彼にはそれがなかった。それだけのことだ。 僕が彼の何かしらの人生の選択の時に電話をかけることが出来ていればとたまに思うけど、その問題が僕に解決できたかどうかも分からないし結局のところ考えてもしょうがないことなのだろう。 でももう少しくらいはうじうじと考えてやりたい。少なくとも僕にとっては今も大事な友人なのだから。
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