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三姉妹は松元に挨拶して帰路についた。
運転席に小百合、助手席に泉が座り、運転席の後ろの席に和香が座っている。
小百合は猫の墓に置いたものと同じお札をバックから取り出し、ダッシュボードの上に置いていた。
和香は窓から外を見ていた。
見渡す限りの伊佐平野は殆どが田んぼで、まだ田植えには至っておらず、飼料作物が青々と茂っていたり、耕運されて茶色い地盤が見えたりしていた。
と、背後から得体のしれない気配が迫り、三姉妹を乗せた車を追い越して行った刹那、ぱん、と音がしてダッシュボードの上のお札が二つに裂けた。
それは、突風に似たものであったが、三姉妹の頭には古い列車のイメージが浮かんだ。
「列車?的なものが追い越して行ったわね」
「実体のない列車なのでしょうか。レベル2のお札が簡単に裂けましたわ。1枚3000円もするのに」
「12万円もらえたら3千円くらいちゃんと払うわよ」
「猫ちゃんのお墓の分もありますから、合計6000円です」
「もう、わかったから――でも、今のは意外と大物みたいね」
「お姉さまどういたします?列車の気配を追いかけますか?それとも駅跡地に引き返しますか」
「お札が破けたところを見ると、最初の作用点は駅跡地ね。駅跡地に一票!」
「ウチも駅跡地に一票!」
小百合はウインカーを左に出し車を路肩に止めると、ゆっくり丁寧にバックし、あぜ道に車の後部を入れて、走ってきた道へとUターンした。
「えー?!普通こういうシーンって、派手にキキ―ッとかいってUターンするものじゃないの?ほら、ブレーキターンとか」
「タイヤがすり減りますわ。サスペンションにも負担がかかりますし」
「なんか、緊張感無いわねー」
三姉妹を乗せた白い四輪駆動車は、北へ向かい取って返し、薫風の中を疾った。
「やっぱり破けてるわね」
出水は小さな墓の横に置かれた札を手に取った。
真ん中から綺麗に裂けていた。
「ねこちゃんガ化け猫ちゃんになっテ、フーッってしたのかしラ。みてみたいデス」
「小百合もだけど和香ちゃんも緊張感無いわねー」
「化け猫じゃなくて、車掌になったのだと思いますわ」
「なるほど」
「会っテお話がしたいデス」
「でも、その列車って自分たちの意思で乗れるものでもないでしょう」
「測量会社のおじさんタチはどうしテ乗れたのかナ?」
「乗れたのではなくて、乗せられたですわ。ここに来て測量したことで列車の因果の何かにかかわった」
「小百合ちゃんが置いたお札が破けたから、私たちも列車との間に因果の糸が繋がったわけよね」
「じゃあ、私モ乗れるネ」
「ちょっと和香ちゃん、あなた自分から乗りに行くつもり?」
「そうダヨ」
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