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プロローグ
平島コンサルタント社長と社員2人が、伊佐市の土木工事の測量業務の委託をうけ、旧JR山野線西山野駅のあった場所を測量していた。その土地は既にJRから伊佐市へ売却されていたが、集落の意向で道路を通すことになったのだ。
コンクリートの駅のホームは既に藪に覆われてはいたが、よく見ればそこに駅のあった佇まいがあった。
社長が光波測定器を使い、社員の久保の持つ小さなミラーを狙う。一昔前ならば、トランシットという測量機で角度と距離を測り、紙の図面の上に多角形を描いて面積を測るのだが、今はGPSと光波測定器のおかげで、境界や測りたい点にミラーを刺したピンを置くだけで、機械の中に自動的に座標が落ち、図面が出来上がる。角度の測り間違いも少なく作業は簡素で精度は非格段に高くなっている。
作業をしている社長と久保に、白いライトバンが近づいてきて停車し、ドアが開き、両手にコンビニ袋を提げた男、樺山が降りて来た。
測量する二人の作業はもう少しで終了するところまで来ていたが、時計を見ると12時前だ。
三人はかつて列車への乗り入れ口だったコンクリートの上に腰かけ、弁当を食べ始めた。
コンビニの弁当はまずくもなかったがとりたてて旨いわけでもなく、それでも三人は詰め込むように弁当を平らげ、コンクリートのホームの上に寝転んだ。
叢を吹く風は、青草と初夏の香りを含んでいた。
心地よい風に、いつしか三人はうたた寝し始めた。
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