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月の顔
「ムーン・フェイス」
ジョン・クレバーハウスは月のような顔をしていた。あごと額は、ほおの骨に溶け込んで完璧な球形になっていた。そして、幅が広く、ずんぐりしていて、顔の周囲から等距離にある鼻は、天井にくっついた生パンのように、顔の中心でペチャンコになっていた。
たぶん、それが、私が彼を嫌う理由だった。彼の顔は本当に私の気分を害した。
彼の存在は地球にとって邪魔者だと、私は信じていた。
私の母は月に対して迷信深いものを持っていて、何か悪いことが起きた時には、
月のせいにしていたかもしれない。
母が月に対して感じるように、私はジョン・クレバーハウスをひどく忌み嫌った。
世の中の人が考えるような悪い害のある仕打ちを私にしたからという訳ではない。
全く、別の問題なのである。その邪悪は、より深い、何か微妙で、掴みどころがなく、
理解しにくい。言葉にしようとすると、平明で、明確でなくなってしまうたぐいのようなものだった。私はジョン・クレバーハウスをひどく嫌った。
世の中の人が考えるような悪い害のある仕打ちを私にしたからという訳ではない。
そういう事とは全く別の問題である。その邪悪は、より深い所に在って、何か微妙で
とてもつかみどころがなくて理解しにくいもの、言葉を用いて、平明で明確な分析する
ことを無視するようなものであった。私たちは、人生のある時期にこのようなことを
経験する。私たちは、そのような人間が存在するとは夢にでも思わなかった、
ある種の人間に出会ったとき、こう言う。「私はその男が好きではない。なぜ、好きではないのか。ああ!分からない。ただ、好きではないという事は知っている。嫌いと思ったのだ。それが全てだ」
そういうふうに、私はジョン・クレバーハウスに感じたのだった。
そんな男が幸せである何の権利を持っていたのか。彼は楽天家だった。
彼はいつもうれしそうに笑っていた。いつでも全てのことがどうでもよいことだった。
彼を呪いたまえ!
彼がそんなに幸せであるということが、いかに私の魂を害したか!
他の人なら笑ってもいい。それは私を悩ませはしない。
私自身すらよく笑ったものだった。ジョン・クレバーハウスに会うまでは。彼の笑い!
それは、この世でそれ以上のものがないというくらい、私をイライラさせ、気を狂わせた。それは私に執りつき、しっかりと握りしめ、私から離れなかった。
それは途方もなく大きくて、ものすごい笑いだった。起きているときも、寝ているときも、それはいつも私と一緒にいた。それは巨大なやすりで心の琴線を渦まくようにこすって
神経を苛立たせた。
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