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「は……はい」
歩美は華奢な肩を震わせて、涙声で何度も頷く。
あーくそ、思いっきり抱きしめたい。でも…………
俺はドM、ドMドM。
今は我慢だ。――俺たちの、未来のためにも。
「監督とマネージャーの関係じゃなくなったら……覚悟しとけよ」
「……わかりました。本当はもう、準備万端ですけど」
「ンンッ! ゲホッ、おまっ」
「というか監督、さっきのアレは、完全にアウトなんじゃ……?」
「マスク越しだから、ギリギリセーフなんだよ」
「あは、なにそれっ! 審判買収してるんですか?」
「うまいこと言わんでよろしい。ほら、暗くなる前にとっとと帰れ!」
――決めた。
歩美が卒業したら、飽きるほど言ってやる。
『好きだ、歩美。お前のこと大好きだ!』
その昔“スライダーの設楽”と一目置かれてた俺が……ちゃんちゃらおかしいけど。
ガキくせぇと思われても、しつこいと言われても、何度でも言ってやるからな。
むさ苦しい部室に不釣り合いな屈託のない笑顔を見下ろしながら、俺は、心の中でひそかに誓った。
***
「へっくしょいっ!!」
「監督……ヒノキの花粉症、ホント酷いですよね」
「ズズッ……はーぁ。まだ五月かよ。
あと一年、なーげぇなぁ…………」
Fin⚾*
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