真っ暗闇トンネル

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「ちっ、つまんねえなあ。何かもうちょっとゾクゾクするような場所ないかなあ。今日だけで四箇所もまわったってのに、どこも出ないじゃねえか」  悟志(さとし)は加えていた煙草を窓から投げ捨てた。  朝から一人、車でめぼしい心霊スポットを走り回ったが、どこへ行っても心を満たしてくれる刺激は得られない。 「次、どこ行くかな……」  悟志はハンドルを握った手で軽くリズムをとりながら、外の景色に目をやった。  だいぶひとけのない山奥まで来た。  道路脇に車を停めているが、横を通る車はしばらく見られそうにない。  右手に続くガードレールを越えるとそこは断崖絶壁で、下には小さな川が流れている。  その向こうには雄大な山々が連なっており、その隙間から西日が届いていた。  悟志は地図を広げ、それを眺めた。  ここなんてどうだろう。  見つけたのは今いるところから十五分もしない場所。  携帯電話を取りだし、調べる。  真っ暗闇トンネル。  検索結果が表示され、その一つを開く。  開いたページには、雑草が繁茂した壁に、ぽっかりと浮かび上がるトンネルの画像が表示されており、その下に「馬倉山トンネル」という文字が書き込まれていた。  『入ったら最後、暗闇に捕まって永遠に出られないと噂のトンネル』  真っ暗闇トンネルというのは馬倉山(まくらやま)トンネルという名称からつけられたものらしい。  トンネルが作られた原因は不明で、使われていたという記録はなく、その付近に他の出口らしきものは見つかっていないという。  本当かどうか怪しい情報だが、数年前に地元の若者たちが肝試しに入った際、誰も帰ってくることがなかったという事件まであったそうだ。 「これは期待できそうだな。よし、真っ暗闇トンネルに決定!」  そう独りごちて、悟志は深くアクセルを踏み込んだ。
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