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予告編
コロナ解決のためバブルに行くというタイムトラベルものの予告編です。
基本、セリフを抜き出して構成してあるので、手軽に雰囲気をつかめると思います。
制作中かつボツ予定のエピソードも混じっており、多少、嘘予告の部分もありますが気にしないでください。
ネタバレ含む気がします。飛ばして本編に進んでも大丈夫です。
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エクリプセ。
新型コロナウイルスの治療を目的とする新薬の名称だ。
日本で開発が進められており、語源は「日食」。
研究開発は順調と見られ、大きな期待が寄せられていた。
だが。
研究を支える数学理論は不完全なもので、開発は最終段階にきて難航。
理論を構築した数学者はすでに死去しており、このままでは開発は頓挫する。
幻に終わるかと思えた新薬に、しかし、希望の光が差す。
完成形の理論を記した論文が発見されたのだ。――ただし、暗号化された状態で。
鍵は数学者が墓場へ持っていった。
「パスワードがわからないなら
過去から取ってくればいいじゃない」
「どこのアントワネットだ!」
経歴も年齢もばらばらの(ちょっとだけ)オタクな5人が、コロナ治療薬の「鍵」を手に入れにバブル時代へと飛ぶ。
レーワとショーワのオタクが遭遇したとき、どんなオタトークが展開されるのか?
*
「テレビ、デカっ」
「デカくないだろ。二十型ぐらいだぞ」
「えっ、だって箱みたいな形じゃん」
「ああ、ブラウン管、見たことないのか。ちなみにこのタイプを英語でtubeっていうんだ。あの『YouTube』の語源だ」
「えっ、もしかしてこれでYouTube見られるのっ?」
「見えねーよ……」
「おお、ドラボンゴールだ」「改じゃなくてZのほうかよ」「カイ?」「すげえ、Zのリアタイとかありえない」「リアタイ?」「ほんとにあらすじ長い。1P並」「声、全員同じだ」
「やばい、ナディヤやってる」「エバーと同じとこが作ったやつ?」「そうそう」「教育テレビでこんなマニア向けを放送する時代になったのネェ」「むしろEテレなら普通」「イーテレ?」
「マジで凍芝の一社提供だ」「予告のあとってジャンケンじゃないんだ」「ほぼ全員の声違ってて笑う」「てかハマさんって誰」
「あれ? MXがなくない?」「MX? ナニそれ?」「東京MXの開局は1995年だ」
「そのウォーキングマン、500曲も入ってるの!?」
「ほとんどアニソンばっかだけど。あたしは少ないほうだよ。友達とか1000曲超えてる子、普通にいるよ」
「1000曲!? からかってるでしょっ。どうやったらそんなに入るわけ?」
「ストレージが64ギガだから、わりとふつーに」
「またそれっ。日本語でしゃべってよ、日本語で」
「とどのつまり――積木くずしってことよ」
「顔キリッで意味不明な昭和用語を使われてもね!」
「もうっ、手伝ってあげるから見せて。なんで母親のテスト勉強を子供のあたしが手伝うはめになるのよ」
「あ、歴史はいーから。鎌倉幕府の『1185年(いいはこ)』だとかのデタラメ吹き込まれても困るし」
「でたらめじゃないって言ってんでしょっ」
「とどのつまり――積木くずしってことよ」
「顔キリッで意味不明な昭和用語を使われてもね!」
「もうっ、手伝ってあげるから見せて。なんで母親のテスト勉強を子供のあたしが手伝うはめになるのよ」
「あ、歴史はいーから。鎌倉幕府の『 1185年 (いいはこ) 』だとかのデタラメ吹き込まれても困るし」
「でたらめじゃないって言ってんでしょっ」
「BASICってたしか死ぬほどクソ遅えんだろ?」
「BASICは、ね。ファミリーズベーシックは『CALL』『PEEK』『POKE』命令でメモリに直接アクセスできるから、アセンブリや機械語のコードが実行可能」
「つまりどういうことだってばよ?」
「BASICの数十から数百倍の速度で処理できる」
「って、はっや!」
「ねえ、これ見てよ。『COMMAND.COM』だって」
「『コマンダー』って、映画の?」
「それ、URLじゃないから……って、えっ……!? なにこれ……」
「モグさん、ちょっとまずいことになってるかも、来て」
「どうした?」
「陽子さんのPCに、COMMAND.COMが『2個』ある」
「キミ、妙な五百円硬貨を所持してるね」
「本物そっくりだけど、おかしな色で側面はぎざぎざ。そして『平成二十年』の文字」
「つーかホンモノだし」
「これ以上の生意気が言えないよう腕の一本ばかりへし折ってやろうか? あん?」
「いででっ! てっ、てめえら、ほんとにケーサツかよ!」
「桜の代紋がオールマイティーパスってのは、この世のジョーシキでしょ」
「マジ、ありえねえし……。昭和、どうなってんだ……」
「ヤマさん。例の偽造硬貨、チョイとおかしなコトになってるんスよ」
「あの粗悪品がどうかしたのか?」
「いや、低質な二級三級品どころか、実は大蔵省に匹敵する超A級のデキなんだとか」
「なにィ?」
「――よく考えたらお兄ちゃん、こうなることって、最初から知ってたのよね?」
「……」
「助けられたのに、ずっと隠したまま平気な顔して……」
「陽子……」
「人殺しっ!」
「だって……アタシにはなにもないもの……」
「未来の知識も、コンピューターも、タイムマシンも、お金も」
「いくら日本じゅうがお金持ちでも中学生にはちっとも関係ない」
「アタシには……、将来生まれてくる葵を人質にするぐらいしか、ほかに方法がないっ……」
「ママ……」
『――地下鉄三塩化リン事件。東京メトロで死者十人以上、負傷者が数千人出た――』
「この『東京メトロ』というのはなんだ?」
「え、えと、なんだっけ……、エ、エーダン?ってやつ」
「営団で死者十人、数千人の負傷者だと!」
「暗号――解けちゃった……」
「ちょっ……、これって――どういうこと?」
「小半助教授って、つまり――」
「ママ……本当に歌えるの?」
「ウン……、――くんにエールを送らなきゃ」
「Anything I ain't that world to be……、It's……know……カミング……とぅ……」
「えっ……?」
「ス……すぺ……スペシャル……ふぉー……マイ……」
「ママっ……」
「あんど……ざっと……しーずん……………うっ……うっ……………ううぅ……」
「陽子……」
「ママ、やっぱり――くんのことが……」
――ガンバレぇー!! ――泣かないでー! ――ダイジョーブだヨーっ。
「くっ……、いかん。『Tip of that World』は中止だ。次の曲に移るぞ」
「お、おう」
「いや――待ってくれ、モグさん」
「どうしたっ?」
「――That feelings coming up me」
「えっ……?」
「There is wondering moss a be cuts burger oh I see」
「葵……」
「Cup a clouds Sue see low, Got ten sun my ham a」
「あいつ、いつの間に覚えて……練習を……」
あんなに発音が残念なママなのに、この曲だけはすごいじょうずに歌える。
でも、二〇二〇年のママがこれを歌ってるとこ、あたし、一度も見たことないよ。
だめだよ、こんないい曲、封印しちゃ。
「バブル崩壊の阻止はさせん。このまま崩壊してもらわないと困るんだ」
「バブル? フッ……そんな些末なことはどうだっていい」
「なに?」
「もっと大局が変わる転換点が歴史上にはあるだろう」
「ま……さか」
「な、なんだっ……これは……!?」
「――ようこそ、二〇二〇年へ」
「またね……ママ」
「ウン……十五年後に会おうネ、葵」
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