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「劉輝はおるか?」
「度重なるご訪問、傷み入ります。戦でございますか?」
「いや、まだしばらくは様子見じゃ」
「それは、ようございます」
「そう言うと思った。それはそうと、その絵は何じゃ?」
「暇を持て余しておりますので、新しい家の在り方でも考えようかと」
「ほう、一見すれば昔の高床式の家に見えるが?」
「新しい高床式の家にございます」
「新しいとは?」
「鋼の立方体の上に住居を載せるのでございます」
「なるほど、四角い枠組みの上に住居が鎮座しておるようじゃな。して?」
「その四角い枠の上部に、これまた鋼の綱を数か所張って家を浮かせるのでございます」
「その意味は?」
「はい、高床なのは水害から、綱で浮かせるのは地震の揺れから守るためでございます」
「なるほどのお」
「土台部分が鋼ですので、揺れや大波にも耐えるかと」
「今年も台風の季節がやってきておるからなあ。よい案かもしれぬが……。その台風で我が藩の魚釣諸島計画がなかなか前に進まんで困っておる」
「連続で参りましたからね。しかし、院度藩の方面では作戦が進行中とか?」
「どこからそれを? まあよい。相手も引かんで困っておる。例のごとく我が藩は監視所などを設けて実効支配を見せつけておるが、きゃつらも軍事用の道路を粛々と整備しておる」
「かなりコロリでダメージを受けておる筈ですが」
「鷲鷹藩に次ぐ勢いで患者は増えておるが、軍は強気のようじゃ」
「それはそうと、邪藩の新しい藩主は決まったのでございますか?」
「ウム。おぬしが言った煮貝に裏から手を回し、須賀を推すように仕向けた」
「結果は?」
「近々わかるじゃろう」
「結果によっては、次の手をどうするか、でございますね」
「鷲鷹藩のコロリ第一波が収束せぬ現状では、次の第二波作戦が遂行できぬ。邪藩を落とす方が先か?」
「先進藩である鷲鷹、とうに収束させると思ったのでございますが……」
「かの藩の民は意外と能天気で、多少の不自由を我慢すれば蔓延を防げたものを」
「自由勝手に生きる生活を優先させた結果でございますね」
「ま、楽しみながら病に伏せっておるがよい」
「では先に邪藩を喫緊の課題とし、須賀が藩主なら裏から手を回し、そうでなければ前面に対決色を出すことで」
「さあ、どちらの面が出るか、楽しみじゃのお」
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