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「オヤー、リューキサーン、如何ナサレマーシタ? 藩100周年ノ記念式典デハナイノデースカ?」
「私は影の軍師。表舞台には出ないのだ」
「ホウ、ソウデースカ。デハ、我々ノ所ヘ来ラレル決心ガツイタノデースネ?」
「いや、そうではない。お前に偉そうに言われ、むしゃくしゃしたので、反論しに来たまでだ!」
「反論? ソレハ面白イ」
「いいかよく聞け、領民の願いを叶える? それは物理的に不可能だ。領民が『素晴らしい藩主様だ』『さすが、お殿様だ』と言ってもらえる政をするのが我々の本分だ。そして、領民が『我が藩が一番!』そう誇りをもって生きられるようにするのが務めだ。
中には反感をもつ者もいよう。それは当然だ。どこかの道を広げれば、誰かの土地がなくなる。通りを通る大勢の人は便利になり喜ぶが、その土地を手放した者は反感を抱くかもしれない。そこで、『殿は人の意見を聞かない酷い奴だ』と声高に叫べば、殿の評価が下がるかもしれない。あるいは、それで領民たちの間で諍いが起るかもしれない。それは望ましくない。より多くの領民が同じ方向を見て、藩を愛するようにするのが我々の仕事なのだ。そのためには多少の統制も必要なのだ。
我々は決して領民をないがしろにしてはいない。政の基本は領民の幸せの追及にある。だから、強い藩、を目指すのだ。強い藩は豊かな国となり、領民の暮らしを向上させる。結果、安心安全な藩となり、幸せに至る。
人にとって何が大切か?
もちろん幸せに生きることだ。
我々はそれを実現しようとしているつもりだ。
誰からも文句を言われる筋合いはない。
高貴な身分? 何だそれは? そこに差別意識はないのか? 高貴な者は下賤の者に施しをしてあげよう。そう言っているようにも聞こえるが? 随分上から目線ではないか?
自己矛盾を内包してはいないか?
我々は自分たちを『高貴』などとは言わない。藩の『中心』と考えているだけだ。そして日の本の『中心』となり、天下泰平の世を粛々と造り上げようとしているだけだ」
「ブラーボー、ブラボー! 実二素晴ラシイ演説デーシタネ。アナータノ理想ハ分カリマーシタ。シカーシ、アナタノヤッテイル事ハ、ソノ真逆デハアーリマセンカ?」
「真逆だと?」
「ヨク言イマースヨネ、コロリヲ撒イテオイテ。他藩ノ領地ヲ勝手二埋メ立テテオイテ。善意ノフリシテ港等ヲ造リ、債務不履行二陥レ其レヲ捲キ上ゲテオイテ」
「それは仕方のないことだ!」
「ホラ、自分ノ都合二合ワセ、理論ヲ変エル。アナータニ、邪藩ノ加辺ヤ須賀ヲ批判スル資格ハアーリマセンネ」
「やがて天下泰平になる」
「フム」
「お前たちこそ、世界を混乱に陥れている秘密結社ではなかったか? 確かお前は、世界ヲ思イ通リニ動カシタイダケデス、と言った筈だ。そんなお前たちに、私を我が藩を批判する資格はない!」
「数年後二大キナ戦イガ始マリマース」
「以前にも言っていたが、本気なのか?」
「戦ガ始マル時ハイツモ一緒。何処カノ勢力ガ何処カノ勢力ヲ包囲シ、孤立化ヲ図ル。今、其レガ起キテイマセンカ?」
「包囲? 孤立化? この日の本の事か?」
「イエ、日ノ本デハアーリマセン。隣ノ大国デース。アナータの国は大国同士ノ間二アリ、戦場トシテ打ッテツケナノデース」
「打ってつけだと?」
「東ノ陣営ト西ノ陣営ノ、代理戦争ノ場トナリ、焼土ト化スノデース」
「この、日の本が焼土と化すだと?」
「両国ノ国民感情ヲ煽ッテイマース。ソロソロ機モ熟スデショウ。ソウシタラ、大戦ガ始マリマース」
「……」
「ワターシ達ハ、アナタノ他二、十数名ノ優秀ナ人材二声ヲ掛ケーテイマース」
「止められないのか?」
「ソーデース。アナタガ今言ッタ『仕方のないこと』ナノデース」
「何故、仕方のないこと、なんだ!」
「ソレハ此処デハ言エマセン。私達ノ組織二入ッテ頂ケレバ、オ教エ致シマースガ」
「ええい、話しにならん! 今日はこれで帰らせてもらう! 失敬!」
「ハーイ、サヨナラ。次ガ最後ノチャンスデースヨ!」
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