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進学して説明会のときに、はじめて話した同級生。それが、隣に座っていた彼だった。
仲の良い人数人といられればいい、学部で多くの人と関われなくてもいい、と考えていた私だから、隣の彼ともこれっきりの縁だろうと思って、話す気はなかった。
そもそも、部活や委員が同じでない男子になぜか恐怖感を覚えてしまうので、ことさらに男子に話しかけるのは苦手なのである。
だけどふと、彼の方から話しかけてくれた。
初対面の相手に緊張しているのか、敬語で。
私も話しかけられたことに驚いたのと、わずかに人見知りしているのとで、敬語で返した。
名前を訊きあって、名字が漢字まで全く同じことにびっくりした。
そこから途切れ途切れに、自己紹介をした。
どこの出身なのか、高校のときは何部だったのか、兄弟はいるのか、とか。
正直、緊張していたものだからそんなに詳しくは覚えていない。
緊張しすぎて一つ一つの話が長く続かなかったことを、その晩に後悔したし今でも申し訳なかったと思っている。
なにより、もったいなかったなあ、と。
それでも彼のことはとても強く心に残った。
最初に敬語が出てきたってことは、真面目な子なんだろうな、とか。
私同様そんなに話すのが得意そうではなかったから、すこし親しみがわいたなとか。
この先どこかで、また話せたらもっといろんなことを話してみたいな、と思った。
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