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そこから二か月。
彼とは一言もしゃべらなかった。
同じ授業は大人数で行われる学部の必修か外国語だけだったのだから、しょうがないと言えばしょうがない。
少人数の外国語の授業も、ペアワークを行わなければ話すタイミングがなかったのだ。
教室でふと見かけて、ああ彼だ、と私が一方的に思う。
やはりあの日が奇跡的だっただけで、もうきっと彼と話すことはないのだろうな、と、私は諦めていた。
でも、説明会から2か月後の外国語の授業。
教室にいる人と、習ったフレーズで会話をしようという課題が出た。
各々が歩き回って会話をしていく中で、偶然彼と会話をすることになった。
課題通りに、初めまして、と私が話しかけた。
すると君は笑って、初めましてじゃないよね、と言った。
朝駅で見たよ、同じ電車だったんだね、と。
胸のあたりが、ぎゅっと締め付けられるような感じがした。
私のことを覚えていてくれたことと、彼の目にも私が留まっていたことが、たまらなく嬉しかった。
私だけではなかったのだ、と。
確かに朝、駅で彼を見かけていた。
でも、彼の目には特別私が映えることはないだろうと思っていた。
あまりに衝撃的で、その言葉にうまく返せたのかは全く覚えていない。
しばらくどんどんと胸が高鳴って、息苦しかったけれど、幸せだった。
そこから私の目は一層、彼の姿を探すようになった。
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