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そして現在、12月。
以来、彼とは外国語の授業の同じくペアワークの課題で数回話したきりだ。
しかも最後に話したのは、夏前ときた。
相変わらず、私はちらりと彼の姿を探してしまう。
夏休み明けから見かける回数が減ったので、他の学部生同様にちらほらと授業を休んでいるらしい。
そんな真面目なわけでもないようだ、とこれは新たな発見。
でも六月、彼との二回目の会話のころから始まった体育の選択授業が同じになったので、重なる授業の数自体は増えた。
バスケを選択したのだけれど、元バスケ部の彼は当然のことながらとてつもなく上手かった。
ちょうどいいからここで白状しておくが、彼を目で追ってしまうのは、彼の容姿も大きな要因だった。
周りに騒がれているわけではないから、単に私の好みなだけかも。
少し長めの黒髪も、男子としては平均的な背格好も、何も珍しくはないはずなのに。
かっこいいとも思うのだけど、それ以上に、綺麗だなと感じた。
そうして彼のことを気にかけながら過ごしていたけれど、ついぞ年度が終わるまでに、彼と話すことはできなかった。
前に会話した時から時間がたつほど、話しかけるハードルが上がっていって、話しかけるのがとても不自然に感じられて、むしろ一層遠ざかって行ってしまった気がする。
一度だけ、彼に声をかけたことがあったけど、我ながら突然というかおせっかいだったかな、と思う。意識しているのがバレてしまわなかったか、気持ち悪がられていないか、後からとても怖くなった。
彼と一緒の最後の授業が終わった時、視界の端にいつものように彼をとらえて、思わず嗚咽が漏れそうなほどの後悔が押し寄せた。
あの時も、もっと前のあの時も、ちょっと頑張れば自然話ができたのに、とか。
あの時緊張して避けたりなんかしなければよかった、とか。
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