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詩乃はあまりの馬鹿馬鹿しい展開にたまらず、意識下で紫音に話しかける。
(紫音!なんなのよこいつ。私聞いてないわよ、こんな友達がいたなんて。てか子どもじゃないのこれ?)
紫音も意識下で応酬する。
(友達でもないし小学生でもないわ。高校の時に入ってたオカ研の後輩。私は何とも思ってないのだけれど、妙に懐かれて困ってるの)
(ほんとに紫音は変な奴を引き寄せるよねえ。でも私の直感ではこいつヤバイわよ。親しくしない方が…)
(まあ、霊魂のくせに普通に話してるあなたが一番変な奴だけどね。でも縁のヤバさなんて承知の上だから、親しくしたつもりもないのに…あっ、詩乃、すぐに遠くに逃げてよ)
恐神縁は高校2年生の17歳。去年まで紫音と詩乃が所属していた高等部の学生で、紫音が言う通りオカルト研究会の部員である。
突進力に富んだ物怖じしない性格もさることながら、縁の持つ不思議な能力は、大概のことには動じない紫音をして一歩引かせる要素であった。
とどめを刺すように、縁はわざとらしくクンクンと鼻を鳴らす仕草をしながら言い放つ。
「あーっ!紫音先輩気をつけて!この辺に邪悪な空気を感じますよー?ていうか、だから来たんですけどね!えへへー」
紫音と詩乃は、同時にギクーッと縁を見る。
「な何を言ってるの縁、私に限って変な霊が付くとか…」
「あれ?縁、霊なんて言ってませんよ。もしかして先輩、霊に憑かれてるんですかー?絶対ダメですそんなの!私が許しません」
言いながら縁は、無意識なのかそうでないのか、姿が見えないはずの詩乃の方を見やる。指がニギニギと怪しく動く様子に詩乃は慌てる。
(何なのこの娘!私が見えるの?ひょっとして霊能力者ってやつ?確かにヤバイわ)
焦る詩乃に、紫音が語りかける。
(この娘、神社の娘でね。それが関係あるのかわかんないけど、見える体質らしいのよ。おまけに縁は巫女として、除霊術が評判で…)
詩乃は霊魂のくせに冷や汗をかきながら、そーっと踵を返してこの場を去ろうとする。それを察知したか微妙なタイミングで、縁がいっそう素っ頓狂な声を上げた。
「あーっ!紫音先輩、ガーデニングしてたんですね。可愛い人は趣味も可愛いなー。花の図鑑!見てもいいですかー?」
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