後ろの理解者・ep.6

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 紫音の趣味といえば、愛犬と過ごす他には花を育てることくらいだ。本来なら女の子らしい趣味として好感を持たれそうなものだが、紫音の場合、常に沈んだ半笑いと破滅的な性格のおかげで、大学では隠キャの暗い趣味として認知されていた。花的には風評被害である。 「あら縁、あなたもお花が好きなの?いいわよ、今種を蒔いたのはね…」  普段は花の趣味を理解されない紫音は、縁が興味を持ってくれたのが満更でもない様子。しばし図鑑を見ながら楽しげに過ごす。それを密かに見守る詩乃は、何だか面白くない。 (何よ何よ何よっ。わざとらしく趣味に付け入るなんてビッチのやり口じゃないの。紫音の花好きなんて私は3年前から知ってたわよ、きー!…そりゃいくら紫音でも、話をするのが私一人ってことはないよね。紫音が笑うのは、私といる時だけだと思ってたのにな…)  ぎりぎりと嫉妬する詩乃をよそに、縁はさらにテンションを上げる。 「紫音先輩!ほらこの図鑑、花言葉が載ってますよ。そうだ!ゲームしましょうよ。お互いに相手のことを思って、目をつぶって花言葉を指差すの。それが、実は相手に対する本心なんです。面白そうでしょお?」 「全然。そんな面倒なことをしなくても、『不意の来客が邪魔』っていう花言葉があれば十分だわ」 「まあまあまあ、じゃ始めますよ!まずは縁からー。縁にとって紫音先輩は…」  (いん)のマイペースの紫音を上回る、(よう)の超絶マイペースで強引にゲームを始める縁。紫音はどうやら、守勢に回ると弱い一面があるようだ。 「はい!出ました!何かなー」  縁は、適当にめくって指差した花を調べる。 「サンビタリア!えーっと…花言葉は『私を見つめて』!やーん、縁、恥ずかしいー!これ本心だもん、当たってるー」  紫音は、滅多にしないであろうドン引きした表情で縁を見る。 「スティングやフィル・コリンズならともかく、お断りです」 「またまたあ。いいんですよ私、紫音先輩ならストーキング歓迎です。じゃ次は紫音先輩、張り切ってどうぞー」  面倒くさがりながらも紫音はページをめくり、花を指差す。その花はハマユウ。 「ハマユウ?どんな花かな…あっ!花言葉は『汚れのない』。いやーん、縁が清純で可愛いってことですよね。ありがとうございますー、紫音先輩」 「何を言っているの。そっちじゃないわ。もう一つあるでしょ。よく見て」 「えー?花言葉って、一つの花に対していっぱいありすぎで難しいんですよね。えーと、『どこか遠くへ』。いやだー!紫音先輩ぃー!」
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