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 滲んだ涙は、あの時みたいに悲しい涙でも、悔しい涙でもない。 「おい、大丈夫か」  能面のような顔だけど、焦っているのが言葉からわかる。  私はにっこり笑って、 「大丈夫です」 と、答えた。  季節はちょうど源平小菊が咲き乱れる頃。  私はきっとまた恋をする。  一番近くに居て、それでいて遠くから見守ってくれた能面のように表情が見えない、だけど優しい人、立花部長にきっと…… 「おい、何を笑ってるんだ」   「いえ、なんでもないです。 部長、今度ランチでもご馳走して下さい」 「……そうだな、今日の詫びに。湊本の行きたいところでいい」 「はい。 楽しみにしています」 e6933bbb-9805-4bed-afc4-f5093069576b  源平小菊の花言葉、「遠くから見守ります」。  辛いこともあったけれど、それもすべて今に続いているんだったら、あの辛かった時間も無駄じゃない。  ようやくそう思えるようになった私は、また一歩踏み出そうと決心した。                               終
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