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席に着くや否や、俺は自分の飲み物を頼んだ。
「ぼくは、いつものウーロンハイを。お前は?」
「じゃ、焼酎ロックで」(…酒、強いのか?)
堂に入った梛音の注文の仕方に、俺はたじろむ。
この店は建て付けこそ古いが、手入れが隅々まで行き届いており、居心地が良かった。なので気に入っている。
店主の人柄のせいだろう、客の雰囲気も悪くない。互いに適度な距離感を保ってくれるのが有り難かった。
なので、どうしても断れない酒の誘いには、この店をいつも利用させてもらっている。
「やっと大学以外でも、憐と二人きりになれたね」
俺に誘われた事が余程嬉しいらしく、先ほどから梛音の表情は緩みっぱなしだった。
しかし目の前の梛音が喜べば喜ぶほど、俺の胸中は複雑になっていく。
俺たちは互いのジョッキとグラスを軽く寄せ合い、それぞれの飲み物で喉を潤した。
「憐はいつもこれなの?」そう言って梛音は俺のジョッキを指差す。
「ああ…」俺の答えは短めだ。
俺がいつもウーロンハイを頼む理由……
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