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まずは助かってよかったわねぇ、と黒薔薇がミレナと二人の「りさ」にミントティーを勧める。 ランドプロテクトの魔法なんてもうどのぐらい使っていなかったかしら。身体が覚えているようなもんね、もう、と黒薔薇。 実はうちら、魔界で異端派だったんです、「りさ」が告白する。 「──魔界では『生かさず殺さず』という画期的な論考が発表されて、これまでのような、精気を奪うときに魂まで奪うような荒っぽいことが禁止されたのです」 「りさ」の話は黒薔薇にもちょっと意外なようだった。 なにせ、その論考は、小悪魔が一度ターゲットを──複数でも──決めたら、まさに文字通り「生かさず殺さず」、搾精(さくせい)の量を抑えて生きていこう、というのだから。 今までの小悪魔は、最初の搾精で犠牲者の精や魂を全部吸い取り殺してしまっていた。 結局わたしたちもその魔界を革命した理論に従うことになっちゃいました、とミレナ。──これからはその「生かさず殺さず」で人間界に順応していきます。 そして、ミレナと「りさ」……里沙と梨紗は、ぱっと女子高生の制服姿に変身した。里沙と梨紗はブレザータイプの制服に、ミレナはセーラー服に。おまけに彼女はアンダーリムの眼鏡姿で。 またおいでよ、と黒薔薇が見送った。──これは餞別、まったくお金がないんじゃたいへんだろうし……。 ──はい、また来ます。いろいろといい男探しますっスよ。 里沙が笑った。 元気な赤ちゃんをいっぱいお産み、と黒薔薇。 ミレナ、里沙、梨紗たちが、秋葉原駅に向かって、「なんか人間界も悪くないんじゃね?」と無邪気に去ってゆく。野次馬が大勢やってくる秋葉原の裏通りを。 魔界ハーフ、魔界クォーターの人間が急増する近未来を想像しつつ、そして、将来もまた魔界から現れるであろう、跳ねっ返りの小悪魔たちを頭に描いて自分の若いころのようだと思いながら──黒薔薇微笑。
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