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あ、ここだここだ──。 「りさ」たちとミレナは「秋葉原香草」と白い看板に太めの明朝体で黒く書かれたお店の前で喜んでいた。 「本当にあるのかな?」 「ハーブのお店じゃないの」 とにかく入ってみようよ……、とミレナ。 ドアを開けると人のよさそうなおばあさんが出迎えてくれた。 「かわいらしいお客さんが六人も、いらっしゃいませ」 里沙が唐突に切り出した。 ──あの、黒薔薇媚薬ありますか? と。 コルク栓の広口壜が並ぶ店内はごく普通のハーブの店だった。 ただでさえ狭い店内に、木材に黒いニスを塗った卓と椅子がある。 その横の壁に、タロット占いもできます、一回千円三十分から、とポスターが貼ってある。 「ありますよ、お嬢さんたち」秋葉原香草のおばあさんはすべてお見通しのようだった。「──魔界のゲートがついさっき開いたときからだね、わたしのお店に来るだろう、ってね」 梨紗がおばあさんにマンドレイクを六本渡す。 「これで、媚薬六人分ください」 「まあものには順番があるでしょう。話を聞いてちょうだいな」 秋葉原香草のおばあさんはぽつぽつと話しはじめた。 地図にも描かれていない広大な土地で黒薔薇を栽培していること。エッセンスは1CCあたり黒薔薇二六○○本が必要なこと。しかしこの黒薔薇栽培は、海外へも高価で売れるため、本当に薔薇好きな秋葉原香草のスタッフさんたちに世話をしてもらっていること。品種は日本で産まれた「真夜」であることなど──。 で、ブツは今あるんですか? ミレナが訊いた。 あるにはあるけれどねぇ、とおばあさん。──一壜しかないから、六等分しないとね。待ってておくれ。空いている壜に今六人分わけてくるから。マンドレイクが手に入るとは嬉しいわ。 で、なにがしたいんだい、あなたたち、とおばあさんが訊くと、里沙がきゅっ、と鳴いてから説明をはじめた。 ──ある程度は魔界にいても人間界のことはわかるんです。だけど、地上の男とエッチするだけで小悪魔の寿命が延びて、なによりもっとかわいくてエロい身体つきになれるって聞いて──。 「でもよくうちの店を知っていたわね」 ──魔界から人間界へと住処(すみか)を変える小悪魔がいるんです。そんな小悪魔からときどき連絡が届くので……。 と、ミレナ。
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