3-1

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理彩は小悪魔アイの能力を使って、秋葉原駅周辺の男性を吟味していた。 容姿にはかなり目をつぶって、どのぐらいの期間エッチしていなくて欲求不満なのか、はたまたどのぐらい精液がいるのか、要するに、特濃の精を絞り立てられるか……の情報が、彼女たちの左目視界左上に数値化されていた。 彼女は飛び抜けて数値の強い黒づくめのアキバ系の男を見つけて、 「お兄ちゃん!」と飛びついた。 すえた臭いがするのを我慢して、理彩は勝手に男の腕に自分の腕をからませる。 そしてちょっと背伸びをして自分の口の高さを男の耳にあてて、「ね、エッチしたい」とささやく。続けて、もちろんただでいいの、と付け加えるのも忘れずに。 先程ちょっと口を潤した黒薔薇の媚薬が効いているのか、男がもともとこういったのに引っかかりがちな性格なのか、とにかく悪質なぼったくりガールズバーとは思われずに済んだ。 秋葉原から鶯谷へはすぐ。 「お兄ちゃんどこのラブホにする?」 目にとまった無数のラブホのなかからたまたまパッと見て、こ、ここがいいなと上気している男をリードして、チェックインする。もちろん部屋代は男持ちで。なんといっても小悪魔だから魔界の貨幣しか持っていない。 部屋を施錠するとすぐ、理彩は黒薔薇媚薬をちょっとだけ口に入れ、男の口の中に(よだれ)を垂らして投薬する。効果は瞬間的に現れた。 ──さすが黒薔薇の媚薬ね。 理彩の身体からもオタク系の男の身体からも、薔薇の香気成分、ゲラニオールやネロールが(かす)かに本来の淡い身体の匂いと混じり合い、理彩も男も目が(うる)んだ。 黒薔薇にはネガティヴな──憎み、恨みなど──の他にも「永遠の愛」という花言葉がある。
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