4-2

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「魔界にはあたしの名前『黒薔薇』は忘れ去られたのかねぇ」 「おばあさん、いや、黒薔薇さん! それより、ここは大丈夫なの?」 ミレナが訊いた。 こうしているときにも秋葉原香草に展開された盾は天使が次々と繰り出してくる光の槍を受け、キンキンと音を立てている。 黒薔薇は店内に設置してあるフリーWi-Fiを指さす、ミレナはすぐさまノートパソコンを接続する。 全世界、まだ人類の誕生はおろか造山運動の太古から、宇宙の消滅まで、時と空間に起こる事象を記録したデータベース、ルドルフ・シュタイナーの神智学(テオゾフィー)でいうアーカーシャ年代記をミレナはクラックした。 「早く天使を片付けて!」 秋葉原香草の建物全面にに展開したランドプロテクトに光の槍が跳ね返される。 急がないとそろそろ危ないよ、と黒薔薇が心配そうに言う。 「りさ」が急かすと、黒薔薇もノートパソコンの画面を覗き込んだ。 黒薔薇が注意をうながした、天使単体だけでは消せない、と。 わかってます、とミレナは冷静に判断を下した。 アーカーシャ年代記に、この日秋葉原上空に天使が出現したという情報と同じ情報量、魔界ゲートの出現を与え、同時に両者を消滅させることを狙う。 「あなたたち、帰れなくなるわよ、いいの?!」黒薔薇が慌てて言った。 ──わかってます! 人間界(ここ)で暮らしますから! ミレナは一通り天使と魔界ゲートの情報を紐づけると、どちらも消滅させるようキーを叩く。「はぐわ、うぐなるぴつぴら、にゅん、はちょぴはがるく」呪文を詠唱(えいしょう)しながら、エンターを叩くと同時に、「きあ、するかにふにゃろ!」と唱えた。 アーカーシャ年代記は難なくクラックされた。上空、地上と、強い振動が起こり、天使も魔界へのゲートも、そこだけモザイクがかかったように存在が希薄になってゆく。モザイクの大きさはどんどん小さくなり、天使もゲートもそのまま消えてゆく。
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