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第二話 不適格
「いつまであやふやにするつもりだよ」
優里にバレているぞと言うと、拓は用心していたんだけどなぁと呑気な返事をよこした。
「お前の尻拭いとかもうやだからな」
文句をいう俺に、拓はそう言うなと笑い、分け隔てなく優しくしているのに、優里も面倒なヤツだなと愚痴をこぼした。
拓とは中学からの付き合いになるのだが、こいつの周りの女たちはなぜだか中毒のように会うのをやめられなくなる。
女の扱いが上手いのだろうかと思っていたのだが、特にそうでもないようなので、拓がうぬぼれるのもわからないでもない。
「理人、なんか適当にごまかしておいてよ」
こいつは天性のクズだなと思いながらも、優里を含め、拓に惑わされる女たちも愚かだなと感じる。
「おまえさあ、いつも似たり寄ったりの女と付き合うけど、飽きないの?」
「いや、それがそれぞれ違った個性があるんだって。俺は歴代の女たちの長所をちゃんと把握してるぞ」
調子のいいことを言うこいつに、俺はいつかしっぺ返しが来ますようにと願った。
優里さんが私と彼氏さんの関係に気が付いたのは彼女の態度を見れば明らかだった。
あんな彼氏に時間を費やしていないでもっと私のことを優先してほしい。
「狙ってたターゲットってそっちだったの?」
妹の歩が予想外だという顔をする。
「そうだよ。優里さんの男ってなんか、面白みに欠けるっていうか、彼女いい人すぎるから気付かないのかもしれない」
歩は携帯でショート動画を見ながら、お姉ちゃんのことだからまた人の男に手をだしてスリルを味わっているのかと思ったと言った。
「うーん、最初はそんな感じだったんだけど、優里さんの彼と会うようになって、この人のどこに彼女から選ばれる要素があったんだろうって興味がわいたんだよね」
しかもあの男は優里さんを失う恐れというものがないのか、私以外にも他に女がいそうなのだ。
「優里さん、あの男に毒されちゃってわけがわからなくなっちゃってるんじゃないかなぁ」
「その男に女たちをおびき寄せる何かがあるんじゃない?」
その人の気を揉むのもいいけど明日は我が身だよ、お姉ちゃんも気を付けて~と歩はくすくすと笑った。
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