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ふと、星矢は異変に気づいた。
先ほどまで激しく吠え立てていたゴールデンレトリバーが、今は大人しくお座りし、落ち着きを取り戻している。
まるで“マテ”の合図をされたかのように、一切動こうともしない。
そのまるである種の魔法のようなその男性の所業に、星矢の内面に言い知れぬ興味と関心かがもたげ始めたのだった。
「うん、うん、そうか、そうか。分かったよ。大変だったな。」
その男性は、一人納得したかのようにしきりに首を縦に振っている。
男性と犬が真正面から向き合いお互い見つめ合っている様は、種を超えたある種の友情のようなものが芽生えたかのようだ。
星矢は、その光景を我を忘れたかのように見入ってしまっていた。
割り込む余地すらないほどに。
や、やっぱり、か、会話してる………。あ、あの犬の落ち着いた様子からして……、あの男の人が何か話しかけたからに違いない。で、でも、そんなことが本当に可能なんだろうか………?
星矢の心の中で、目の前の現実を信じたい気持ちと否定したい気持ちが内混ぜとなり、自分が何処か現実から隔絶された遠い知らな世界に連れて来られたような感覚に囚われた。
「ねえ、君、君ってば。なにボ〜ッとしてるんだい?
それとも、君もこの犬と話したいのかい?」
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