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「でもねえ、正直言うとどうやって会話するのかと聞かれても、君たちには説明しようがないんだよ。君たちにはまだ理解出来ないと思うよ。
それよりもこの犬が抱えていた問題の方が気にならないかい?」
その悪戯っ子のような表情を浮かべると、男性はおもむろに立ち上がった。
「そ、そりゃあ、気になるよ。叔父さん、教えてくれるの?」
星矢の好奇心が膨らんでいく。
「ああ、いいとも。この犬はねえ、かなりフラストレーションが溜まっていたんだ。毎日、毎日、同じところ、同じ時間に散歩に連れられてね。もう飽き飽きしてたんだよ。だから、今日散歩中に隙を見て逃げ出したんだって。」
「ええ〜〜!それじゃあ、飼い主が心配して探してるんじゃないの?
早く、居場所を知らせてあげないと!」
星矢が驚き勇んで駆け出そうとすると。
ガシッ
星矢の腕を鷲掴みにする、その男性の握力は見た目からは想像できないほどに力強いものだった。
「い、痛いよ、おじさん!ホント、馬鹿力なんだから。」
「ああ、ごめん、ごめん。すまなかった。つい、力が入っちゃってね。」
男性が、星矢の腕を掴んでいた右手をそっと離す。
「うちのお父さん日頃から肉体労働やっててけっこうマッチョなんだけど、もしかしたら、おじさんの方が腕力あるかもね。ちょっと、ビックリしたよ。」
「ああ、そうなのかい。そんなに腕力がある方でもないんだけどね。
それよりも、君。闇雲に探し回ったって飼い主がそう簡単に見つかるもんでもないよ。もっと簡単な方法があるんじゃないかい?」
男性が、先程見せた悪戯っ子のような表情をして見せる。
「もっといい方法………?」
星矢がしきりに首を捻ると。
「何だ、分からないのかい?簡単なことだよ。この犬に直接、飼い主の家を教えて貰えばいいのさ。ねえ、簡単なことだろ?」
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