ある男

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「………、ええ〜〜?!お、おじさん、難しいこと言うね?僕には、何が何だかさっぱり分からないよ。」 「ちょっと、君にはまだ難しかったかな?まあ、分かり易い例で言うなら、さっき君が指摘した僕が手首につけているもの……。これは、僕のモノでも、誰かのモノでもないってことだよ。」 「う〜〜〜ん、じゃあ、誰のモノなの?」  星矢はしきりに首を捻っている。 「あははははっ!! だから、誰のモノでもないんだよ。君は完全にこの世界の既成概念の虜になってしまっているね。まあ、この事は、君自身には全く責任はないんだけどね。 とりあえず、議論はこれぐらいにしておいて、そろそろこのわんちゃの家を探しに行こうじゃないか?」  と、その時だ。  「ウォン!!」  ずっと大人しくお座りしていた、ゴールデンレトリバーがタイミングよく 吠えたのだった。 「ほら!ワンちゃんも、早く行こうよって言ってるよ。僕がちゃんと案内するからさあって。」  その言葉を言い終わるやいなや、男とゴールデンレトリバーがほとんど同時に歩き出した。 「ちょ、ちょっと、待ってよ!」  星矢が、不意を突かれて出遅れてしまい慌てて跡を追う。
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