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「お巡りさん!あいつだよ!!あいつが、バッグをひったくった犯人だよ!!」
少年が指差す先にはーーーー。
別の警官によって連行されている、明らかに人相の悪い男が周囲の野次馬連中に凄みをきかせている。
ようやく警官たちに解放された男は、少年に向かって深々と頭を下げた。
そのまだ思春期さながらのあどけない顔を紅潮させ、照れ笑いする少年。
犯人に突き飛ばされた老婆が丁寧にお礼を述べて立ち去ると、二人して警官たちがひったくり犯が連行される様を目で追っていた。
「ところで、おじさん。何でこんな夕方になってもサングラスしてるの?
見えにくくないの?」
少年が、まだ幼さの現れか不躾なな質問を投げかけた。
男が、苦笑いをする。
「いや、これをしてないと眩しくてね。手放せないんだ。」
「ふ〜〜ん、そうなんだ、変わってるね。
ところでさあ、おじさん急に何処からか突然現れなかった?
僕見てたんだよ。さっきの引ったくり騒ぎの前に、何だか急に不思議な光りが現れてさあ、その後光りが消えたと思ったらそこにおじさんが立ってたんだよね。あれって、何かのトリック?それとも、テレポーテーションとか?」
少年は、まだ子供であることの無邪気さも手伝ってか、執拗に男に質問を浴びせかける。
だが、男はそのはにかんだ表情を崩さず、
「君の思い過ごしだよ。そんな芸当僕ができるわけない。
僕は普通に電車を利用しようと、駅の中を歩いていただけだよ。」
少年は少し解せない表情を見せるも、それ以上この男性に質問を投げ掛けても期待に沿うような返答は得られないと悟ったようだ。
質問内容を変えてみる。
「それじゃあ、おじさんが右腕にしてる腕時計さあ。防水機能ついてないでしょ?浸水しちゃって壊れてるんじゃないの?
何で、そんなに大事そうにしてるわけ?」
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