ある男

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少年の名は、持田 星矢。 父が生来興味持っていた宇宙や星座に関連した名前を、ということで付けられたのだ。 “星矢”ーーーー。 星矢自身はあまり自分の名が気に入ってはいなかった。 特に、宇宙や星座などにも興味もなかったからだ。 どちらかというと、父が経営している牧場、そこにいる動物たちの方に星矢の関心は向いていた。 牧場には、馬や牛、羊が飼育されており、他には犬や猫も。 皆、それぞれに特性があり、役割も違う。 星矢は時々思う。この動物たちの考えていることが分かったなら……。 どれだけ、仕事が捗るだろうか。より、動物たちの身になって世話することができるだろうか。 星矢は今中学二年生。 友達と遊びに行きたい年頃にも関わらず、学校が終わると毎日とは言わないまでも牧場の仕事を手伝わされる。 だが、星矢は寧ろそれを楽しんでいた。 大変だが、やり甲斐はあった。動物たちの日々変わる容態や行動に触れるに連れ生き物の奥深さを、まだ若干14才という年齢で気付き始めていた。 ほっそりとした体型に丸顔の頭がちょこんと載っかってる印象だ。 そのサラサラの少し長めの髪型は、父親からもっと短くしろという言葉を撥ね付け頑なに貫き通している。 今日は、これから塾に向かうところであった。 通学は、普段自転車を利用しているのだが、星矢の家の周りには塾というものが全くなく、仕方なく遠方の塾通いに電車を利用している。 高校受験を控え、早めに通った方がいいという母親の意見が尊重され二年生に上がってから通うこととなった。
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