ある男

9/18
前へ
/26ページ
次へ
 すると、その男性は小首を傾げ星矢の顔を覗き込むように、その深い知性を帯びた瞳で見つめ返す。  面食らった星矢が、言葉を詰まらせながら再び疑念をぶつけた。   「だ、だから、ほ、本当に犬と喋れるのって聞いたの? それとも、おじさん昔、何かドッグトレーナーとか、犬に関わるような仕事に就いてたの?」  一瞬、間が空くも、その男性は、訝しげな表情を崩すことなく逆に星矢に質問をしてきた。 「可笑しな質問をするね、君は。犬と会話ができるのかって? それじゃあ、逆に質問するけど、『君たち』は犬や他の動物たちと会話はできないのかね?会話したことはないのかい?」 至極当然といったその表情からは、傲りや睥睨のような感情は微塵も感じられない。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加