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「この間の模試で判定が上がったんだー。ライさんのおかげだよ! ありがとう!」
「へえそう」
希望はライの隣に座ってにこにこしている。
ライは対して興味なさそうに呟いて、希望の腰に手を回した。抱き寄せるようと僅かに力を込めて、ぷっくりと厚めの希望の唇をじっと見つめる。
「……あっ、それでね!」
希望はぱっとそこから離れて、鞄を開け、中を探る。
勝手に自分の腕の中から消えて背を向けた男に、ライがゆっくりと視線を向けていた。
希望は参考書と問題集を持ってくると、何事もなかったかのようにライの隣に座る。
「また勉強教えてほしいんだけど、だめ?」
くりん、と小首を傾げて、希望がライを見つめる。潤んだ瞳で、甘えるようにライを見つめて、ぴったりとくっついた。
「この間すごくわかりやすかったし、ライさんが教えてくれたところ成績良くなったからまた教えてほしいなぁ……」
「……」
「夏からは仕事も少し休んで勉強頑張ろうと思うんだけど、ライさんが教えてくれたらもっと頑張れそう!」
「……」
ライはじっと希望を見つめたまま、反応がなかった。
希望は必死だった。今のままでは目標の大学に合格するのは難しいだろう。猫の手、どころではない。虎の手みたいなライの力を借りたかった。大学合格の為に。
……などという、ちゃんとした理由ももちろんあるが、希望にはもう一つ大事な理由がある。
ライさんと一緒にいたい!
大人な恋人に勉強を教えてもらうのはとても良いものだった。すごく良かった。
落ち着いた低い声を聞きながら勉強できる。勉強しながら、くっついていられる。
普段とは違う立場で、違う目線で恋人を見られるのもとてもイイ。楽しい。勉強も捗るというものだ。
学力不足を補うなら、予備校に通ったり、学校のカリキュラムを利用したりすることもできる。ライでなければならないわけではない。
しかし、それではどうしても、ライとの時間が犠牲になってしまう。それは嫌だ。すごく嫌だ。
希望は大学に合格したいが、ライと過ごす時間は一㎜も譲りたくなかった。
そんな希望のわがままを満たすのが、『ライさんにお勉強教えてもらおう大作戦』だ。
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