狐の嫁入り

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「ねえおばあちゃん、どうしてさっきはあんなに怒ったの?いつもあんなに怒ったりしないのに」 今年で齢7歳になる孫が老婦に尋ねた。老婦はぷりぷりと少女のように怒りながら、 「だってあのお手伝いさん、私の宝物を捨てようとしたのよ」 と答えた。 孫は不思議そうに、 「でもおばあちゃん、そのハンカチもうボロボロだよ?おじいちゃんに新しいの買って貰えばいいのに。おじいちゃん、優しいしお金持ちだから何でも買ってくれるよ」 と言ったが、老婦は「違うの、他の手巾じゃ駄目なの」と首を振り、孫を諭すように、 「これはね、昔私の大切な人がくれた手巾なの」 と言った。 孫が誰かと尋ねると、老婦は遠く昔を懐かしむ顔で、 「私と駆け落ちする勇気もなければ、手巾の花言葉でさえ告白できない、物知りで優しいお馬鹿さんよ」 と笑った。 桃色の椿の花言葉は、『控えめな愛』
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