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「なにしにきた? 俺のおもりなんかごめんなんだろ。してもらったつもりもないけど」
「あ、あずさ、ちゃんと聞いて」
「お前の気持ちは、わかった。ごめん、今まで気づかなくて、無神経で。記憶を本当に無くしてたらよかった。俺なんて、お前に友達とも思われてないどうしようもない男だったんだからな」
そういうと視界が歪み、涙が目じりから零れた。
「い、や、だ!」
腕を掴まれ龍介に引き寄せられ、そのままギュッと抱きしめられた。
「い、痛い。なんなんだよ、お前」
「友達だとは思ってない。それはごめん。でも、俺、梓のこと好きだよ」
――はぁ? 好きだけど、友達とは思えない? 何言ってんだ、コイツ。
意味が分からない。それに、呆れた口調で言っていた龍介のあの言葉はなんだ。
「でも、お前は俺のおもりをしてたんだろ? 俺、どうしようもないヤツだからさ」
「違う! 俺がワガママな梓のおもりをしてるって思っていたけど、違ったから。梓のことは、俺しか面倒みられないって自惚れていたんだ。本当はいつも俺のことを見てくれていて、そして、思っていてくれているのが、わかったから。対等に接してくれていただろ?」
目尻から流れていた涙を、龍介の指先で拭われた。抱き締められながら、上目遣いで龍介を見つめる。すると、静かに語り掛けるように頭上から龍介の声が降ってくる。
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