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迷いのない、一直線の青。真っ直ぐな青。一言で言えば凛々しい。曲がってなどいない、ただ一つの僅かな希望のために邁進する、それを決意した愚直な青―――。
生まれてから今日まで、自分の瞳などまじまじと見たことはなかった。一日一日を生き延びるのが精一杯で、そんな細かいことで感傷に浸る余裕などなかった。
綺麗なものを綺麗だ、真っ直ぐなものを真っ直ぐだ、と素直に思えたのも、今日の、この瞬間が生まれて初めてだったかもしれない。汚いものばかり見てきて、手を常に兄弟姉妹の血で汚してきた私にとって。
―――``あなたと同じ……瞳を持つ人と……出会えると……いいね``
私と同じ瞳を持つ人。もしも出会えたなら、私は人間になれるのだろうか。今のように、綺麗なものを綺麗だと、真っ直ぐなものを真っ直ぐだと感じられるときが再びくるのだろうか。
その人は、私の事をただの都合のいい道具としてではなく、一人の人間、一人の少女として、ずっと見てくれるのだろうか。
その人は、私と同じ眼で、私と同じ志で、私と同じ道を歩んで、たとえどちらかが間違った道へ進みそうになっても引きとめる、そんな関係を築く事ができるだろうか―――。
『そうだといいな……いや、そうする。私の未来は誰のものでもない。私が自分で描くものなんだから』
―――――――――――――――――
「……どした?」
澄男が私の顔を覗き込んでくる。近い。目と鼻の先に異性の顔。自覚がないのだろうか。もしこれが私でなければただの変態扱いされてもおかしくないが、それ以上に、烈火の如く燃え盛る紅い瞳が、近くて、近すぎて―――。
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