たとえそれがどんな罪だとしても、僕は君を

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 ペリメニは、小麦粉を水、卵、バターを混ぜて練り、それを小さくちぎって薄くのばした皮に、挽肉と玉葱、香辛料などで作った餡を包んだ料理だ。  ルクウンジュのあるセーリニア大陸東部の草原地帯に位置する国々で、茹でる、焼く、揚げるといった様々な調理法でよく食べられている。  マルゴおばさんの店は中央市場にある揚げペリメニ屋だった。  揚げたてのさっくりした皮と、中身の旨味溢れる肉餡が人気の店だ。ハツキもここの揚げペリメニが気に入り、テレーズと一緒に中央市場に行くたびに店に寄っていた。  また、店主のマルゴおばさんも大変気っ風がよく、会話をしていて気持ちのいい人物だった。  しかし、ハツキの言葉にテレーズは苦笑を洩らした。 「おまえ、あそこに行ったらペリメニ山盛りになるぞ。おばさん、おまえのことお気に入りだから、ものすごくおまけを付けてくれるじゃないか」 「え? それって君も一緒だからだろ。それにおばさん、ユキ兄のファンとも言ってたよ」  ルクウンジュ政界の重鎮、カザハヤ公爵家の次期当主でもあるサネユキは、祖父や伯父と共に新聞に写真が掲載されることがある。  また社交界でもその美貌やセンスの良さは注目され、同じくファッションリーダーとして名高いテレーズの長兄であるメールソー・ラウールやその伴侶のオリヴィエと共にファッション雑誌に取り上げられることがしばしばあると以前から話には聞いていた。ハツキも王都に来てから、実際に何度か掲載誌を目にしている。  そのためサネユキは王都の女性からの人気が高い。マルゴおばさんもそんなファンの一人だった。 「あそこのペリメニは冷めても美味しいからお土産に出来るでしょ。そしたらユキ兄も絶対食べるから、おばさんも喜ぶよ。ユキ兄も学生時代なんかはお店に行ってたらしいけどね」 「ああ、それおばさんも言ってたなあ。友達と一緒に来てたって。さすがにもうユキさんは気軽に行くこと出来ないだろうからなあ」 「うん。だからお土産に持って帰ってこられたらちょうどいいんだよ」  軽く言ってハツキは身体を返し、テレーズと向き合った。  彼の肩に両腕を回して、こつんとテレーズと額を合わせる。  今は、楽しいことだけを。  テレーズに笑いかける。 「僕たちが恋人同士になって一ヶ月の記念日のデートってことだね」
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