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ハツキの実家、チグサの家があるベーヌ地方に比べ、王都ヴィレドコーリの冬は温かい。
また、現在ハツキが下宿している、母方の祖父の屋敷であるこのカザハヤの屋敷は、館内の全てがセントラルヒーティングで暖められている。
とはいっても、十二月の夜明け前の室内はひんやりとしていた。
冷える冬場の室内でも、朝の布団の温もりは心地よい。
恋人と一緒にいるなら尚更だ。
「ふうん……」
ハツキの背をゆっくりと撫でさすりながらテレーズは相槌を打ったが、不意に手を止めるとハツキの上に覆い被さってきた。
ざらり、と彼の長い金髪が流れ落ちてくる。
「……どうしたの?」
思いがけない彼の行動に、少し身構えてハツキが尋ねると、テレーズはにやりと笑った。
微かな明かりの中でも、彼の瞳が悪戯っぽく光ったのが感じられた。
「こうしているならさ。夜の続き、しようぜ」
「ええ!?」
テレーズの提案に思わずハツキは声を上げた。
頬がまた熱くなる。頬だけではない、耳までも熱くなるのが解った。
「昨日、あんなにしたのに!」
「何言っているんだ。そりゃそうだろ。昨日がどういう日だったか、解っているよな?」
「それは……」言われなくても、よく解っている。
けれど、どうしても言葉にすることが出来ず、ハツキは口ごもってしまった。
ハツキのその様子に、テレーズは仕方なさそうに苦笑すると、左手でハツキの前髪を掻き上げ、耳許に口を寄せて囁いた。
「おまえと恋人になることが出来て、ちょうど一ヶ月だったんだ。張り切るってもんだろ?」
「だからって……、君は張り切りすぎなんだ……!」
テレーズの囁きに昨日の朝から浮かれていたテレーズの姿をサネユキに冷やかされたことや、昨夜のことを思い出し、ハツキは顔を俯かせた。
ハツキの従兄であるだけでなく、兄も同然の育ちをしてきたサネユキは、家族の中でも一番ハツキのことを理解してくれている。その彼が、涼やかな美貌を微笑ませながら、冷やかし混じりとはいえテレーズに優しい言葉をかけてくれているのはいたたまれなかった。
昨晩のテレーズは、ハツキが恥ずかしがろうがどうしようが、どこまでも優しく執拗にハツキを愛撫し、交わってきた。際限もなく与えられる快楽の果てに、ハツキ自身自分がどんな痴態を晒し、何を口走っていたのかも定かではない。
今もまだその感覚の名残が身体のそこかしこに疼きとして残っている。
ハツキの力ない抗議にテレーズは小さく笑い、更に囁いた。
「だって、俺で気持ち良くなっているおまえの、いろんな姿が見たいんだ。俺だけが知っている、俺だけのハツキを」
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