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浮かされたような熱が冷めると、汗にまみれた身体に初冬の夜明けの室温は低い。
寒さにハツキはふるりと身体を震わせた。
それに気づいたテレーズが何も言わずに、ベッドの脇に押しやられていた掛布を戻して二人の身体にかけ、ハツキを背中から抱き締めてくれる。
彼の身体と掛布の温かさに息をつく。
彼に求められ抱かれる悦び、今背中に感じる体温の温かさ、眠りに落ちる時傍にいてくれる心強さ。
──なくしたくないだなんて。
罪だとしても、本来ならば許されないことであっても、彼の未来を損なうことに繋がると解っていてさえももう、この手を離すことが出来ない。
テレーズの唇に首筋を愛撫されながら、ハツキは両手で顔を覆った。
「ハツキ?」
動きを止めたテレーズに低い声で訊かれ、顔を覆ったまま首を振る。
「なんでもない」
「……そうか?」
優しく囁いてテレーズは両手を伸ばし、ハツキの手をゆっくりと顔から引き離させた。そのまま、大きく骨太な手でハツキの両手を包み込む。
それ以上のことは何も言わず、ただこうやっていてくれる。
そんな彼の度量の大きさに涙が溢れそうになる。
けれどそれを飲み込んで、ハツキは小さく顎を仰け反らせ、テレーズの肩に頭を乗せた。
──好き。
彼がどうしようもなく好きだ。
彼と共にいるこの時間が、かけがえのないまでに愛おしい。
窓から空が白んできているのが見えた。
空気がしんしんと冷えていそうな、雲一つない冬の早朝の青空。
「今朝も寒そうだな」
同じように南の窓に目を向けていたらしいテレーズが呟く。
「うん。空が澄んでいる。……そろそろ起きなきゃ。大御神様にご挨拶に伺わないと」
「そうだな」
そう言いながらも、この温かさから脱するのは容易ではない。
ハツキは自分の手を握るテレーズの両手を引き寄せ、胸元で交差させた。テレーズがくすりと笑う。
「今日のおまえの予定って、庭のお社の掃除だけだったよな」
「うん。そうだよ」
テレーズに確認をされ、ハツキは頷いて返した。
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