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「そうして・・・それから2時間後の夜の10時に元夫が病院に戻ってきました」
薺の黒いショートカットの髪が五月の風にほつれて頬にかかった。
「・・・私がちょうど分娩室から病室にストレッチャーで運ばれている途中に、元夫が来ました・・・彼は開口一番『男の子かい?女の子かい?』と聞いてきましたが、看護師さんが私の代わりに『元気な女の子と男の子の双子ですよ!』と答えてくれました・・・すると、彼は『男の子が生まれたか!でかした!』と言い、私の肩をポンと叩くと『赤ちゃんは?どこに?』と看護師さんに聞いていました・・・彼は私が病室に着くまでは付き添ってくれましたが、それからすぐに新生児室に赤ちゃんを見に行ったようです・・・1時間ほどで彼は私がいる病室に戻ってきました・・・病室には私の母もいたのですが、彼は開口一番『元気な男の子だった!・・・でも、女の子が白子だったとはね・・・』
と言いました」
薺はそこで一旦俯いたが、すぐに顔を上げて話を続けた。
「・・・でも、彼はそれ以上は特に白子については触れなかったので、私も何も言いませんでした・・・そして・・・その2日後の昼のことですが、元夫が彼の母親とともに私が寝ている病室を訪れました・・・」
*** 回想 ***
「双子の出産は体が大変だったでしょう?薺さん。私が仕事で出産に来られなくて申し訳なかったですね?」
恵太朗の母は言った。
「・・・いえ、お義母様、大丈夫です。 赤ちゃんは姉と弟の二人とも元気です」
薺はベッドから半分体を起こして答えたが、なぜか夫である恵太朗は手伝ってくれなかったばかりでなく、薺と目を合わせるのを避けているようだった。
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